目次
はじめに
著:田中 泰延
¥1,336 (2024/07/03 14:52時点 | Amazon調べ)
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この記事で伝えたいこと
文章は他人のためではなく、自分のために書け
「どう評価されるか」なんてことを考えて文章を書いたらつまらなくなります
この記事の3つの要点
- 「読んでもらいたい文章」は「読んでもらえない文章」
- 評価されることより、書き続けることの方が大事
- 文章を書く前に、徹底的に調べろ
一般的な文章術ではあまり語られない視点が満載の作品です
著:田中 泰延
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「読者としての文章術」を提示する、あまり見かけない主張
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本書で著者が主張することは、ほぼこの一点に集約されると言っていいでしょう。
それが「読者としての文章術」です。
(本書は)同時に、なによりわたし自身に向けて書かれるものである。
すべての文章は、自分のために書かれるものだからだ。
つまり、「文章は、自分のために書けよ」ということです。
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もちろん世の中には、論文や報告書など、「自分以外のために書く文章」も存在します。しかし、本書では、そういう文章のことは念頭に置かれていません。自分以外のための文章をどう書くかという本は世の中にたくさんあるので、是非そちらを読んでください、ということでしょう。
本書で著者が書くのは、ブログやSNSなど、「そもそも書くことを求められているわけではない文章」についてです。そして、そういう文章なら、「自分のために書けよ」と主張します。
そうなんだけど、実際、自分以外のために書いてる人、多いからね
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「評価のために書く」なんてしてはいけない
ブログでもSNSでも、それが個人のものであれば、基本的にそこに書く文章というのは「書きたいから書いている」はずです。本来的にはそうなるでしょう。
しかし一方で、多くの人が、「評価」のために文章を書いてしまっていると思います。「いいね」やリツイートの数で「自分は評価されている」と感じたいために文章を書いている、みたいな人もたくさんいるでしょう。
章に限らず、何をするにしたって今は、そういう「評価」が丸見えだからなぁ
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しかし著者は、
だが、ほとんどの人はスタートのところで考え方がつまづいている。最初の放心が間違っている。その前にまず方針という漢字が間違っている。出発点からおかしいのだ。偉いと思われたい。おかねが欲しい。成功したい。目的意識があることは結構だが、その考え方で書くと、結局、人に読んでもらえない文章ができあがってしまう
と書いています。「読んでもらおう」と思って書くことで「読んでもらえない」文章になってしまう、というのです。
確かにその感覚は分かるような気がします。もちろん、緻密に設計された文章も面白いですが、それはほとんどプロの技です。我々のような素人にはなかなか真似できないでしょう。そういうプロやセミプロみたいな人を除けば、面白いと感じる文章というのは、「これ、誰かに読まれるなんてこと想定して書いてるんだろうか?」と感じてしまうようなものだったりします。
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だから、読まれることを想定して、ちゃんと面白く文章が書ける人は凄いと改めて思います
さらに、
いずれにせよ、評価の奴隷になった時点で、書くことがいやになってしまう
とも書いています。確かにこれもその通りだなと実感します。
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私は、本を読んで感想を書くことを、もう15年以上ひたすら続けています。本1冊読む度に、3,000字~5,000字の文章を書くわけです。それは、映画を観るようになってからも同じで、映画館にメモ帳を持ち込んで、毎回長々と感想を書いています。
自分がやってきたことを振り返った時、これが「誰かから頼まれた仕事」だったとしたら絶対続いてないよな、と思います。私はとにかく、自分が書きたいと思うことをただひたすら好きなように書き続けてきました。そこに「評価」という視点が入ると、途端にやる気がなくなってしまうだろうと思います。
「何をどう書くか」以上に、「書き続けること」の方が圧倒的に大事
恐らく私はこれまでに、かなり少なく見積もっても1,000万字ぐらい文章を書いています。ざっと新書100冊分ぐらいでしょうか。これだけ文章を書き続けることができたのは、「文章を書くこと」が「自分のため」だったからです。
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もちろん、「運良く誰かに読んでもらえたらいい」と思ってはいました。でも、読んでもらうことを期待して文章を書くことはしていません。この「ルシルナ」というブログは、私が人生で初めて、ちゃんと他人に読んでもらうために立ち上げたものですが、それまでは、そんな意識をまったく持たずに文章を書いていました。
「ルシルナ」は、ちゃんと文章を推敲してますが、それまではずっと推敲もせずアップしてたからなぁ
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著者もこう書いています。
読み手など想定して書かなくていい。その文章を最初に読むのは、間違いなく自分だ。自分で読んでおもしろくなければ、書くこと自体が無駄になる
そんな風に、自分が「書きたい」と思うことだけをひたすら書いていたお陰で、文章を書くことに対する苦手意識はまったくなくなりました。私はもともと理系の人間なので、本の感想のブログを始めるまで、まともに文章を書いたこともありませんでした。しかしそんな人間でも、ひたすら続けていればそれなりに上達します。
まさに、「続けること」が大事だ、ということです。
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さらに文章を書き続けて良かったことは、「考えたことを書く」というステップをすっ飛ばせるようになったことです。
どういうことでしょうか。
文章を書く場合、「どんな文章を書くか頭にざっと思い浮かべてから出力する」のが普通でしょう。しかし私は、毎日毎日大量の文章を書くために、そんなまどろっこしいことをしていられませんでした。
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そこで、「どんな文章を書くか思い浮かんでいなくても、とりあえずキーボードを叩く。書きながら考える。で、文章が出てこなくなったら終了」というやり方を続けることにしました。こんなことをずっとやっていたお陰で、今では、5,000字程度の文章であれば、全体の構成などまったく考えずに、一気に書けます。
また、そんな文章の書き方をしていたからでしょう、文章をキーボードで打ち込みながら、「自分はこんなことを考えていたのか」と気づく瞬間さえあります。「指が思考してる」みたいなことが時々あって、自分の指が打ち込んでいる文章をモニターで見ながら、「ほぉ、こんな思考をしてたのか」と感じる、みたいなことがあります。これが、文章を書いてて一番面白い瞬間です。
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もし、「誰かに読んでもらおう」とか「文章がうまくなりたい」などの目的を持っていたら、15年以上も文章を書き続けられなかったでしょう。目的が、「自分が書きたいと思うことを書く」しかなかったお陰で、ただひたすらに文章を書き続けることができ、そのお陰で、様々なおまけが付随した、という印象です。
どれだけキーボード打っても、肩こりになったりしないのも、自分では凄いと思う
酷い時は、1日10時間以上文章書いてたりするのにね
「評価」について考えるのは、出力した後にすべき
そんなわけで、「文章を書くこと」に対しては、これといった目的意識を持たないほうがいいでしょう。どんな文章であれ、それが何らかの「評価」を受ける可能性があるのは「出力した後」です。文章に限りませんが、出力しないことには何も始まりません。
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だから、「出力するまでのこと」と「出力した後のこと」は切り離して考えましょう。「出力した後」は「評価」と無縁でいられないとしても、「出力するまで」は「評価」のことなど考えていてもまったく意味はない、ということです。
著者も、こんな風に書いています。
ライターになりたい人は、もっと起業家の話を聞いたほうがいい。彼らのように成功した人でも、十個目の商売でやっと成功したとか、成功するまで五つ会社をつぶしたとか、勝負をかけたはずの商品が全然売れなかったとかを経て、いまの商売があたったという人が多い。ライターも同じように、書いてみても、ほぼ駄目なことだらけだ。
自分がまずおもしろがれるものであること。これは、ビジネスアイデアでも文章を書くことでも全く同じだ。それが世の中に公開された時点で、あくまでも結果として、社会の役に立つか、いままでになかったものかがジャッジされる。
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だからとにかく、ひたすら出力し続けるしかない、ということです。そして、出力し続けられるかどうかで、評価されるかどうかも決まる、と考えていいでしょう。
出力し続けるためには、自分が面白いと感じられる方がいい。そういう意味で本書では、「読者としての文章術」が提唱されるのです。
飽きっぽい私が、文章を書くことだけは続いてるんで、相性がいいんだろうと思います
「事実だけを書け」「内面を語る人間はつまらない」という主張
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本書のもう一つの大きな主張は、「文章には事実だけを書け」というものです。正確には、こう表現されています。
物書きは「調べる」が九割九分五厘六毛
つまり、ライターの考えなど全体の一%以下でよいし、その一%以下を伝えるためにあとの九十九%以上が要る。
私は、この意見には少し反論したいのです。というか、著者の真意が適切に伝わっていないのではないか、と思っています。
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上記の引用を普通に受け取れば、「調べた事実だけを書け」ということになるでしょう。確かに著者の、
心象を語るためには事象の強度が不可欠
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ただ、だからと言って、「調べた事実だけを書け」は言い切りすぎている、と感じます。これは恐らく、著者がコピーライター出身だからではないでしょうか。
あんたは「心象」ばっかりの文章を書いてるから、著者の主張を受け入れたくないんだろ?
「九割九分五厘六毛」に対する私の捉え方
著者の主張は一見、「出力された文章全体を『十割』とし、その内の『九割九分五厘六毛』は調べたことであるべき」という風に思えます。しかし私は、「調べたことだけ書け」という主張にはちょっと違和感を覚えてしまうのです。
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ヒントは、著者の、
前の項で述べた「図書館」で「一次資料」に当たれという話は、ひとえに「巨人の肩に乗る」ためである。
巨人の肩に乗る、というのは「ここまでは議論の余地がありませんね。ここから先の話をしますけど」という姿勢なのだ
という発言にあるでしょう。これは、「先人の誰かが既にどこかに書いているようなことを、自分が思いついたことであるかのようにグダグダ書くなよ」という話の最後に書かれています。
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これを踏まえると、何を「十割」とするかには別の解釈が生まれます。それは、「書くという行為自体を『十割』とし、調べるという行為がその内の『九割九分五厘六毛』だ」です。これなら私もすんなり理解できます。「とにかくめちゃくちゃ調べて、書こうとしている『内面』や『心象』がオリジナルなものだって確認しろよ」という意味なら納得です。
まあ私は、『心象』や『内面』がオリジナルかどうかは調べてないけど
その辺も「出力するまで」のことだから、自分のやりたいスタイルでやってこう
「知っているからこそ調べられる」のであり、知識を頭の中に入れておくことは大事
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また、本書では詳しく触れられていないが、「調べる」に関して著者には重要な要素があります。
著者略歴に、
学生時代に6,000冊の本を乱読
と書かれているのです。
「調べる」と聞くと、「知らないことを調べる」と考えがちですが、実際には、「まったく知らないこと」については調べようがありません。ある事柄について「少しは知っている」からこそ、そこをスタート地点として「調べる」ことができるわけです。
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例えば私はもともと理系の人間なので、数学や物理への関心を強く持っているし、それなりに知識もあります。だから、科学の本を読んでいても、「あれ、この記述、前に読んだ本と矛盾してないか?」とか、「ここで使われているこの単語、もしかしたら別のあの単語とほぼ同じ意味だったりするのか?」など、様々な知識を結びつけられるのです。
一方私には、歴史の知識がまったくありません。だから、歴史に関する本を読んでいても、自分の脳内にあまりにも知識がなさすぎて、何も引っかからずに終わってしまうと思います。
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大人になって、もうちょっと真面目に歴史の勉強しとけばよかったって、よく思う
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「調べること」の重要さを強調するのであれば、「あらかじめ知識を持っていること」の重要さにも同時に触れてほしかったと思います。
まったく書かれていないわけではありません。
本を読むことを、すぐ使える実用的な知識を得るという意味に矮小化してはいけない。本を読むことを、その文章や文体を学ぶということに限定してはいけない。本という高密度な情報の集積こそ、あなたが人生で出会う事象の最たるものであり、あなたが心象をいだくべき対象である
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著:田中 泰延
¥1,336 (2022/02/03 23:16時点 | Amazon調べ)
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