目次
はじめに
著:仰木日向, イラスト:まつだひかり
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ポチップ
この記事で伝えたいこと
自分の内側から何かを生み出して表現するとはどういうことか?
ただし、この記事を読むだけではセンスの良い人にはなれません。すいません
この記事の3つの要点
- 表現者が理解しておくべきことは何か?
- 作詞は何故「なめられて」いて、どこが「難しい」のか?
- 表現を受け取る側の理解の助けにもなる
私は特に、これと言った表現者ではありませんので、偉そうなことは言えないんですけど
この記事で取り上げる本
「作詞少女~詞をなめてた私が知った8つの技術と勇気の話~」(仰木 日向)
自己紹介記事
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この記事には大きな欠陥があります。それは、「表現することの本質」についての考えを記していない、ということです。
この『作詞少女』という作品は、基本的には「作詞」についての物語です。しかし、冒頭から2/3ぐらいのところで主人公は「もうお前に教えることはない」と言われ、「作詞講座」は終了してしまいます。
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そして、残りの1/3で、「表現するとはどういうことか?」「表現者に必要なものとは何か?」という話が展開されていきます。
つまり、「表現することの本質」に触れると、作品の致命的なネタバレになる、ということ
というわけでこの記事では、「表現することの本質」については触れていません。『作詞少女』を是非読んでください、と言うのみに留めます。
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しかし本当に、作詞に限らず、言葉であるかどうかにも関係なく、自分の内側から何かを表現するすべての人にとってためになるのではないか、と感じられる作品でした。私自身は、文章を書くこと以外に、特別これと言って表現的なことに携わっているわけではありません。なので説得力に欠けるとは思いますが、「表現することの本質」について、非常に言語化しにくい何かを的確に捉えている、という印象を受けました。
そして、このラスト1/3を描くために、「物語」という形式が必要だったのだ、とも感じます。「作詞講座」だけであれば物語にする必要はなかったと思いますが、登場人物2人の背景的な話も含め、「表現することの本質」に踏み込むために、物語を実にうまく活用していると感じました。
アタシの言ってることなんて全部デマカセだと思っちまえ!
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主人公の一人がこう話す通り、この本に書かれていることが唯一の正解だと考える必要はないと思います。ただし、どれだけ「技術」を高めようが「表現者」という土俵に上がれない現実はあるでしょうし、その根本的な理由について見事に言語化していると私は感じました。
作詞はなめられている
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特に表現に携わっているわけではない私が本書を読もうと思った理由は、まさしく「作詞をなめていた」からです。本書を読む前はまさに、
はーははは。いるんだよな、お前みたいなやつ。作詞くらい誰でもできるとか思ってるタイプのさ。笑っちゃうよな
……お前に限った話でもなくてな、作詞ってのは、なめられたんだよ。素人が趣味でやる分にはまだいいとして、プロの世界ですらな
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という感覚でいました。
本書でも書かれていますが、「曲を作るより簡単そうだし、日本人なら読み書きくらいできるんだから、センスさえあればなんとかなりそう」という感覚は確かに僕の中にありました。だからこの本の表紙や帯で、「作詞に技術がある」と書かれていたことに対して、どういうことなんだろう? と興味を持ったというわけです。
仮の歌詞の段階ではメチャクチャ良かったのに、実際の歌詞がついたら台無し、みたいなことはよくあるらしい
ダメな作詞家をあてがわれた作曲家は愚痴っちゃうよね
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著者があとがきに書いていますが、
音楽をやっている人はかなりの割合で「作詞は難しい」と言い、音楽をやっていない人はかなりの割合で「作詞くらいはできそう」と言う。
のだそうです。本当に、「作詞ぐらいはできそう」と思っててすいません、という感じでした。
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本書は確かに、主な話題が「作詞」に特化しているわけですが、ここで描かれていることはどんなジャンルでも変わらないだろうと思います。
少し話がズレるかもしれませんが、野球を見ながら選手に「なんで今打たないんだよ」とか「そんなところに投げるんじゃないよ」みたいに言っているオジサンとかイメージ出来ますよね。見ているだけなのと実際にやるのとでは雲泥の差があるのに、私たちはどうしても、「自分だったらできそう」みたいな視点で物事を見てしまうことがあります。
コピーライターに対して「こんな一言で大金もらってるのか」と思ったりとかね
コピーも、実際に考えてみると、メチャクチャ難しいよね
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そういう意味で本書は、表現者だけではなく、その表現を受け取る側の意識を変える本でもあると言えるでしょう。「技術」だけあっても表現者にはなれませんし、そもそも「技術」の部分を理解していなければ「正しく受け取る」こともできない、という事態になりかねません。
「作詞」とは一体なんなのか?
本書では、プロの作詞家が素人に教えるという形で「作詞とは何か」が描かれます。教わる素人の方は、本当に何も知らない状態なので、何も知らない読者も同じ段階を踏んで学んでいけるという構成です。
どいつもこいつもハッキリ言わねぇんだ。こんなに大事なことをさ。作詞ができるようになるには、作曲の意味がわからなきゃ話になんねぇんだよ。
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作詞とは作曲と関係がある、という話が出てきても、まだ私にはピンと来ませんでした。もちろん、作詞が作曲と無関係だと考えていたわけではありませんが、詞というのは言葉なのだし、作曲そのものへの理解がないからといって作詞ができない、なんてことはないだろうという感覚はありました。
物語の中でプロの作詞家は、作曲・編曲・歌手それぞれの役割を明確に言語化してみせます。そしてその上で、あらためて素人に「作詞とはなんだ?」と問いかけ、自分でこう答えます。
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―「音楽語の日本語吹き替え」だ
この表現の仕方は、非常にしっくり来るものでした。というのも、音楽には元々、歌詞などなかったからです。
クラシック音楽を考えてみれば分かる通り、音楽というのは「曲」だけで成立します。このことを本書のプロ作詞家は、「音楽語を伝える」と表現します。音楽というのは曲単体で何かを伝えることができ、その伝わるものを「音楽語」と呼んでいるというわけです。
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では、歌詞とはなんのために存在するのでしょうか。それは、「音楽語をより伝えやすくするため」です。本来であれば「曲」だけで届くものを、より分かりやすく補完するものが「歌詞」だ、というわけです。
作詞というのは、「音楽語を理解し、それをより伝わりやすく言葉に変換する」という行為なわけです。だとすれば、作曲を理解していなければ作詞ができない、という発言も、当然のものと頷けます。
本書ではこのように、「作詞がどう受け取られているか」「作詞とはどういう行為なのか」を順序立てて理解させた上で、ようやく実践的な「作詞講座」に入っていきます。この記事では具体的には触れませんが、この「作詞講座」も非常に実践的で面白い。そして、作詞の技術だけを身に着けても表現者としては不十分である、ということが最後に突きつけられる、という展開になっていきます。
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仰木日向『作詞少女』の内容紹介
ここで改めて本の内容を紹介します。
著:仰木日向, イラスト:まつだひかり
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高校2年生の江戸川悠は、軽音楽部所属のクラスメートから作詞を頼まれる。学園祭で披露するのだという。作詞などしたことなかったが、いつも本を読んでいるからか、頭が良さそうに見えるのか、何故かそんな役割が回ってきたのだ。まあ作詞ぐらいヨユーでできるっしょ、と軽い気持ちで始めたのだが、出来上がった歌詞は友人にやんわり拒絶されてしまう。
落ち込む悠の元に、制服をダラッと着てスカートの裾をかなり短く折った、白髪に赤いメッシュという女が話しかけてきた。その女は、見せるつもりなどなかった悠の歌詞をハチャメチャにけなし始める。彼女はどうやら、歌詞ぐらい誰でも書けると思っているテキトー作詞家を心の底から嫌悪しているようだ。
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よく知らない女からけなされ、反論する悠だったが、彼女があのSiEだと知って驚愕する。月9ドラマの主題歌を始め、数々のヒット曲を担当している有名な作詞家だ。伊佐坂詩文というらしいSiEが、実は同じ高校の先輩だと知って、悠は驚きを隠せない。
結果的に悠は、詩文から作詞を習うことになる。しかしこの詩文という女、人間的にかなりヤバい。例えばこんな噂がある。転校したばかりの頃、クラスでいじめを目撃し、激ギレしながら消化器をぶっ放した……。口も悪いし、態度もぶっ飛んでいる。普通ならとても関わりたい相手ではない。しかし彼女が語る作詞の話は非常に魅力的であり……。
仰木日向『作詞少女』の感想
メチャクチャ面白い作品でした。正直なところ、作詞だけではなく、本書のこともなめていました。表紙はどう見てもラノベで、ラノベを低くみているつもりは決してないのだけど、そう高くも捉えていません。
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ラノベだからってマイナスとは捉えないけど、ラノベだから手に取るってこともないかな
「作詞」を物語にするというのもピンと来なかったし、読む前の期待値はそこまで高くありませんでした。だから、意外性も加わってさらに面白く感じられたという側面もあるかもしれませんい。
本書が、ただ作詞の技術を伝えるだけの本だったら、興味深くは受け取ったかもしれないけれど、ここまで面白いと感じることはなかったでしょう。この物語は、悠と詩文という二人の人生の悩みや関係性などが、作詞を含めたストーリー全体に大きく絡んできます。支離滅裂にしか思えない詩文の言動にもきちんと意味があって、ただの突飛なキャラクターではありません。
詩文の、普通にはありえない特異な生い立ちについては考えさせられるし、その圧倒的な孤独に寄り添っていこうとする悠のスタンスも凄く良いです。「作詞講座」を読んでいるはずなのに、ときおり涙腺が刺激される場面もあって、物語が感情を揺さぶってきます。キャラクターの造形が見事で、悠と詩文という二人の関係性だからこそのやり取りがとても良いですね。
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著:仰木日向, イラスト:まつだひかり
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今はYoutubeやSNSなど、多様な発信が可能な時代になっています。意思さえあれば誰でも表現者を目指せる時代だと言えるでしょう。しかしだからこそ競争は激しくもなります。その中で頭一つ飛び抜けるために、「技術」だけではない、表現者としての本質的な心得のようなものを本書を読んで理解しておく必要があるかもしれません。
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「マルタン・マルジェラ」というデザイナーもそのブランドのことも私は知らなかったが、そんなファッション音痴でも興味深く観ることができた映画『マルジェラが語る”マルタン・マルジェラ”』は、生涯顔出しせずにトップに上り詰めた天才の来歴と現在地が語られる
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現代では当たり前の「電子音楽」。その黎明期には、既存の音楽界から排除されていた女性が多く活躍した。1978年、パリに住む1人の女性が「電子音楽」の革命の扉をまさに開こうとしている、その1日を追う映画『ショック・ド・フューチャー』が描き出す「創作の熱狂」
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「追い込む指導者」が作り出す”極限の環境”だからこそ、才能が開花する可能性もあるとは思う。しかし、そのような環境はどうしても必要だろうか?最高峰の音楽院での壮絶な”指導”を描く映画『セッション』から、私たちの生活を豊かにしてくれるものの背後にある「死者」を想像する
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「500年に一度の天才」などと評され、一介のチェスプレーヤーでありながら世界的な名声を獲得するに至ったアメリカ人のボビー・フィッシャー。彼の生涯を描く映画『完全なるチェックメイト』から、今でも「伝説」と語り継がれる対局と、冷戦下ゆえの激動を知る
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「俺が死ぬまで公開するな」という条件で撮影が許可された映画『バケモン』。コロナ禍で映画館が苦境に立たされなければ、公開はずっと先だっただろう。テレビで見るのとは違う「芸人・笑福亭鶴瓶」の凄みを、古典落語の名作と名高い「らくだ」の変遷と共に切り取る
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「無声映画」から始まった映画業界で、音楽の重要性はいかに認識されたのか?『JAWS』の印象的な音楽を生み出した天才は、映画音楽に何をもたらしたのか?様々な映画の実際の映像を組み込みながら、「映画音楽」の世界を深堀りする映画『すばらしき映画音楽たち』で、異才たちの「創作」に触れる
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ドワンゴの会長職に就きながら、ジブリに「見習い」として入社した川上量生が、様々なクリエイターの仕事に触れ、色んな質問をぶつけることで、「コンテンツとは何か」を考える『コンテンツの秘密』から、「創作」という営みの本質や、「クリエイター」の理屈を学ぶ
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【あらすじ】天才とは「分かりやすい才能」ではない。前進するのに躊躇する暗闇で直進できる勇気のこと…
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ベートーヴェンと言えば、誰もが知っている「運命」を始め、天才音楽家として音楽史に名を刻む人物だが、彼について良く知られたエピソードのほとんどは実は捏造かもしれない。『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』が描く、シンドラーという”天才”の実像
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広大な本の世界を狩人のように渉猟し、お気に入りの本を異常なまでに偏愛する者たちを描き出す映画『ブックセラーズ』。実在の稀少本コレクターたちが、本への愛を語り、新たな価値を見出し、次世代を教育し、インターネットの脅威にどう立ち向かっているのかを知る
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AIが個人の好みに合わせて作曲してくれる世界に、「作曲家」の存在価値はあるだろうか?我々がもうすぐ経験するだろう近未来を描く『電気じかけのクジラは歌う』をベースに、「創作の世界に足を踏み入れるべきか」という問いに直面せざるを得ない現実を考える
ルシルナ
才能・センスがない【本・映画の感想】 | ルシルナ
子どもの頃は、自分が何かの才能やセンスに恵まれていることを期待していましたが、残念ながら天才ではありませんでした。昔はやはり、凄い人に嫉妬したり、誰かと比べて苦…
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