目次
はじめに
著:水野敬也
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ポチップ
この記事で伝えたいこと
どれだけ多くのことを知っていても、実践しなければ意味がない
この記事の3つの要点
- 「ガネーシャ」が「僕」に様々な課題を投げることで展開される小説的自己啓発本
- 著者の主張が、読者に直接届くのではなく、登場人物の「僕」に向けられているので、すんなり受け入れやすい
- 「当たり前だけれど、実践し続けるのは案外難しい」というような類のことが書かれています
タイトルを含め、なかなかふざけた感じの作品ですが、思いのほか”使える”と私は感じました
この記事で取り上げる本
著:水野敬也
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本書『夢をかなえるゾウ』の内容紹介と、「自己啓発本」としての特異点
まずはざっくり、設定の紹介をしていきましょう。というのも本書は、「自己啓発的な小説」だからです。
主人公の「僕」はその日、友人に連れられて無理やりあるパーティーに潜り込みます。そこは、普段自分がいる世界とは大きくかけ離れた場所でした。「僕」も「成功したい」という気持ちを常に持ってはいるのですが、現実はそうなっていません。成功者の姿を目の当たりにしてそのギャップに落ち込み、つい深酒をしてしまいます。
翌朝、目を覚ましてみると、なんと部屋にゾウがいました。いや、動物園にいるような普通のゾウではありません。腕は4本、足が2本、口元の牙は片方が欠けており、しかも宙に浮いているのです。まだ酒が残っていて寝ぼけているのだと「僕」は考えますが、決して夢なんかではありませんでした。
そのゾウは、「自分はガネーシャという神さまだ」と主張します。そして、「自分の夢叶える方法教えたるわ」と関西弁で詰め寄ってくるのです。明らかに胡散臭い。でも、どうしても成功したいと思っている「僕」は、ガネーシャから与えられる課題に取り組んでみることに決めるのですが……。
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というように進んでいきます。
全体的には、「僕」と「ガネーシャ」の掛け合いがなかなか面白い作品だよね
確かにそうだけど、小説として評価するよう求められたら、結構レベルは低いと言わざるを得ないよなぁ
さて本書は、「自己啓発本」としてとても優れているのではないかと私は感じました。その説明のために、先程保留した、もう1つの「『自己啓発本』に対して馴染めないこと」の話をしましょう。
それは、「読んでもやる気にならない」ということです。
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これは人によって感覚が違うでしょうが、たまに手にとってみる「自己啓発本」に対して私は、「大体『当たり前』のことを言っているなぁ」と感じます。もちろん、中には「なるほど、そんな発想したことなかった!」と驚かされることもあるのですが、そんな経験なかなかあるもんじゃありません。人類はこれまでも色んな知見を積み上げてきているわけで、世に出回る「自己啓発本」に書かれているようなことはどれも、どこかで誰かが既に主張している内容であることが多いと思います。
つまり、私は「自己啓発本」を、「何らかの成果を出した人物の『それまでの経験』や『過去の業績』などを重しにして、『当たり前の主張』に説得力を持たせている本」だと捉えているというわけです。
どこかの誰かが既に言っている主張でも、知らない人は知らないわけだから、改めて周知する本が出ること自体は悪いとは思わないけどね
ただ、そういう構図を理解しないで、「この主張は凄い」と捉える読者は、ちょっと感覚を改めた方がいい気がしちゃう
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主張内容は「当たり前」のことなのですから、本来は「その『当たり前』をどう実践に移させるか」という点こそが「自己啓発本」にとって重要だと私は考えています。しかし、あまりその点が意識されている本は多くない印象です。もちろん、私は決して「自己啓発本」をたくさん読んでいる人間ではないので、イメージで話しているという問題があることは理解しています。ただやはり、「私はこれこれこういうことをしてきました」という主張ばかりに力点が置かれ、「じゃあ読者がそれをどう実践するか」という点が置き去りにされている感じがどうしても拭えないのです。
もちろん、「自己啓発本」というのは、「自分が憧れるアノ人の頭の中身を知りたい」という需要に応える側面もあるでしょうし、だから「実践の手順」など求めていないという読者も多いのかもしれません。ただ、読んで理解しても行動に移せなければ意味がないと私は感じてしまうので、そういう点で「『自己啓発本』の存在意義って何なんだろう?」と疑問を抱いてしまうことが多くあります。
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「理解すること」と「実践すること」にはかなりの隔たりがあるんだけど、そこが混同されてる感じもするかな
理解しただけで、自分にその能力が備わったかのような錯覚を覚える人もいるのかもだよね
さて、このような違和感を覚える私にとって、『夢をかなえるゾウ』は非常に素晴しい作品だと感じました。本書で描かれていることも、読めば誰でも「当たり前だ」と感じるような内容だと思います。しかし一方で本書は、読み終えたら「これならすぐに実践できるかもしれない」という気分にさせてくれもする作品です。その点が、他の「自己啓発本」とは大きく異なる部分だと私は感じました。
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「小説形式」であることの利点
しかし本書は決して、「実践の手順」が具体的に書かれているわけではありません。では、どうして「やってもいい」という感覚になるのでしょうか?
私はその理由を、「小説形式」であるという点に見出しました。
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読む前は、「小説にしたからってなんなんだ」みたいに思ってたけど
一般的に「自己啓発本」というのは、「作者が読者に語りかける」というスタイルになっているはずです。つまり、「作者→読者」というある意味で”直接的”な訴えになっているというわけです。
このことは、少し窮屈に感じないでしょうか? 少なくとも、私はそんな感覚になってしまいます。
現実の世界でも、「指摘やアドバイスを直接受ける」と、その状況自体に圧迫感を抱いてしまうことはあるでしょう。私の場合、視線が直接自分に向けられるので、「やるの? やらないの?」と問いかけられているような、ちょっと窮屈な感覚を覚えてしまいます。
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しかし本書は、「ガネーシャが『僕』に語りかける」という形式です。この「ガネーシャ→『僕』」というスタイルのお陰で、読者は観客席で講演を聞いているような感覚になれると思います。「登壇者の主張が、観客席にいる自分に直接的に向けられているわけではない」という状況の方が、無用な緊張感を抱かずに済むし、シンプルにその主張内容に耳を傾けられるでしょう。
ガネーシャが「僕」に対して「やれよ」ってけしかけることで、「読者である自分が言われてるわけじゃない」って感じられるのはいいと思う
そこまで狙って本書を構成したのかはよく分かんないけど
そもそもですが、「『自己啓発本』を読もうと考える人」の中には、「上手く行っているという実感を得られていない人」も多くいるでしょう。そして、「上手く行っているという実感を得られていない人」というのは、自分で自分を律するのがさほど得意ではないと思います。それが出来ていれば、上手く行っている可能性が高いと感じるからです。だから、「やった方がいいのは分かっているけど、腰が重い」みたいになる人も結構いるだろうと思っています。またそういう人は、「直接的に向けられる指導」みたいなものにもあまり向かないような気もするのです。
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本書の場合は、本来なら自分がやらなければならないことを、物語の中でまず「僕」がやってくれます。これがまず気楽に感じられる点だと言えるでしょう。さらにこのような形式にすることで、「実践したらどうなるのか」という点もイメージしやすくなるはずです。これもまた、「やってみようかな」という感覚に寄与するポイントだと私は感じました。
このように本書は、「小説」という形式にすることで、「読者が抱くかもしれない負担」を軽減するという趣向になっていると私は感じるのです。
タイトル含め、メチャクチャふざけた本に思えるけど、ちゃんと考えられてるって感じする
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本書で提示される具体的なアドバイスについて
それでは、本書にどんなことが書かれているのか、いくつか触れてみることにしましょう。本書は、ガネーシャが「僕」に何か課題を出し、それに対する「僕」の対応にガネーシャからダメ出しがなされる、みたいな構成になっています。
「何かを止めてみよう」という課題が出された、「僕」は、「テレビを見ることを止める」とガネーシャに宣言します。しかしガネーシャは、「それじゃダメだ」と指摘しました。
ガネーシャは「僕」に、
人間は意識は変えられんのや。
と言っています。人間はまず「意識」を変えようとするけれども、どうしてかと言えばそれが「楽」だからです。「意識が変わった」と思うだけで「何かをしたような気分になれる」ので、安易に「意識」を変えようとしてしまいます。しかし結局それはただの「逃げ」でしかなく、「意識」が変わっても現実には何の変化も起こりません。
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これはホントその通りで、昔から割と意識しているつもり
「意識が変わった」ってのは外から見て判断できないし、いくらでも言い訳できちゃうからね
ではどうすればいいのか。ここでは、「テレビを見ないようにするための具体的な行動」を取らなければなりません。例えば「テレビのコンセントを抜く」などが挙げられます。つまり、「意識」ではなく「具体的な行動」によって変化をもたらさなければならない、とガネーシャは忠告するわけです。
さて、先述した通り、これはものすごく「当たり前」な主張だと感じるでしょう。本書の主張はとにかく、そのような「当たり前だ」と感じるものばかりです。ただ、その重要性や、どうしたら継続できるのかという点について考える機会はなかなかないと思います。そういう意味で本書は、一読の価値があると言えるでしょう。
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結局、「何が正解なのか」は、「自分がどう解釈するか」次第だしね
「普通なら『不正解』になるだろう状況でも、どうにか『正解』に変えられる発想があるはず」って考えるの大事
主人公が「やりたいことが見つからない」と嘆く場面では、ガネーシャがこんなことを言っています。
やりたいことを頭で考えている内は、やりたいことなんか見つからんよ。
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頭で考えていても仕方ないからとにかくやってみるしかない、という話です。しかし、そんなこと言われても、選択肢の幅が広すぎて動けなくなってしまうでしょう。そこで、「『やらずに後悔していること』を思い出してみる」ように言われます。そしてもしそういうものがあるなら、今すぐにやってみるべきだというのです。もし今日やらなければ、明日以降もずっとやらないだろうことは間違いありません。そんな風に行動してみることでやりたいことを見つけるべきだ、という話です。
さて何度も繰り返しますが、当たり前のことばかり書かれていると感じる作品だと思います。しかし、その当たり前のことを実践できているのかと聞かれれば、そうではない人の方が多いでしょう。だからこそ、「いかに行動を起こさせるか」に力点が置かれている本書には価値があるのではないかと感じました。
著:水野敬也
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最後に
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「常識的な捉え方」から逸脱し、世の中をまったく異なる視点から見る坂口恭平は、「より生きやすい社会にしたい」という強い思いから走り続ける。「どう生きたいか」から人生を考え直すスタンスと、「やりたいことをやるべきじゃない理由」を『独立国家のつくりかた』から学ぶ
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「これが答えだ」と安易に結論を出す自己啓発本が多い中で、山田ズーニー『おとなの進路教室』は「著者が寄り添って共に悩んでくれる」という稀有な本だ。決して分かりやすいわけではないからこそ読む価値があると言える、「これからの人生」を考えるための1冊
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AIが台頭する未来で生き残るのは難しい……。落合陽一『働き方5.0~これからの世界をつくる仲間たちへ~』はそう思わされる一冊で、本書は正直、未来を前向きに諦めるために読んでもいい。未来を担う若者に何を教え、どう教育すべきかの参考にもなる一冊。
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『「集中力がない」と悩んでいる人は多いかもしれません。しかし本書では、「集中力は、思ってるほど素晴らしいものじゃない」と主張します。『集中力はいらない』をベースに、「分散思考」の重要性と、「発想」を得るための「情報の加工」を学ぶ
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一般的に自己啓発本は、「今、そしてこれからどうしたらいいか」が具体的に語られるでしょう。しかし『そのうちなんとかなるだろう』では、決断・選択をするべきではないと主張されます。「選ばない」ことで相応しい未来を進む生き方について学ぶ
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「みんなと同じ」に馴染めないと「社会不適合」と判断され、排除されてしまうことが多いでしょう。しかし『非属の才能』では、「どこにも属せない感覚」にこそ才能の源泉があると主張します。常識に違和感を覚えてしまう人を救う本から、同調圧力に屈しない生き方を学ぶ
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自由に生きられず、どうしたらいいのか悩む人も多くいるでしょう。『自由をつくる 自在に生きる』では、「自由」のためには「支配に気づくこと」が何より大事であり、さらに「自由」とは「不自由なもの」だと説きます。どう生きるかを考える指針となる一冊。
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メガネファストファッションブランド「オンデーズ」の社長・田中修治が経験した、波乱万丈な経営再生物語『破天荒フェニックス』をベースに、「仕事の目的」を見失わず、関わるすべての人に存在価値を感じさせる「働く現場」の作り方
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教育・学校【本・映画の感想】 | ルシルナ
大人になって様々な本を読んだことで、「子どもの頃にこういう考えを知れたらよかった」「学校でこういうことを教えてほしかった」とよく感じるようになりました。子どもの…
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ルシルナは、4000冊以上の本と500本以上の映画をベースに、生き方や教養について書いていきます。ルシルナでは36個のタグを用意しており、興味・関心から記事を選びやすく…
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