目次
はじめに
この記事で取り上げる本
三省堂
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ポチップ
この本をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 「見えない天体」であるはずのブラックホールは、なぜ撮影できたのか?
- ブラックホールの撮影にはどれほどの困難が伴うのか?
- 大規模な科学研究につきまとう「ノーベル賞問題」
科学理論の話よりも、「いかにプロジェクトを完遂させたか」という人間の話がメインになるので、科学が苦手だという人も面白く読めると思う
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「ブラックホールを撮影する」という驚異的で壮大なプロジェクトはどのように展開されたのかを『アインシュタインの影』から学ぶ
この記事で紹介する本は、「ブラックホールを初めて観測したプロジェクト」の詳細に触れるものだ。もちろん、「ブラックホールとは何か」についても触れられているが、メインとなるのはプロジェクトの方なので、この記事でも、「ブラックホールそのもの」の説明はしないことにする。
ブラックホールについては、以下の記事で触れているので、そちらを読んでほしい。
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今回の記事でも、ブラックホールの性質に一部触れるが、それは「観測」に関係する部分に留めようと思う。
「ブラックホールの撮影」がなぜ可能なのか?
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2019年4月10日に、科学史においても歴史的となる記者会見が行われた。ブラックホールの撮影に成功したというもので、撮影された画像が世界中で同時に公開されたのだ。
この時の会見は、科学研究の発表という意味では異例づくめだったそうだ。「解禁時刻」は日本時間では22時07分に設定された。通常なら1時間単位で区切られるものだし、そもそも22時という遅い時間に記者会見を行うこともない。世界同時発表ということでこのような時間設定になったのだろう。そこまでして同時発表にこだわるという点に、注目度の高さを感じさせる。
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また通常、科学研究が一般の人の関心を惹くことはないが、ブラックホールとなると話は別だろう。映画・アニメ・SFなどに当たり前に登場するものだし、難しい理論を知らなくてもどんなものなのかイメージしやすい。しかも、「光を吸い込むから真っ黒で見えない」と言われている天体が「観測された」というのだ。どういうことなのか、興味が湧くというものだろう。
さて、まずその点から説明していこう。なぜ「ブラックホールの撮影」が可能なのかという話だ。
ブラックホールは、「光さえも吸い込む天体」であり、自らの周囲にある様々なものを無尽蔵になんでも吸い込んでいく。しかし、なんでも吸い込むといっても、すぐに吸い込まれるわけではない。ブラックホールの周囲で渋滞待ちのように様々なものが滞留しているのだ。
滞留している物質は、ブラックホールの周りをぐるぐると周回しながらやがて吸い込まれていくわけだが、その周回している間に他の物質とぶつかる。どれもとんでもないスピードで周回しているので、ぶつかることで摩擦熱が発生するのである。
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つまりブラックホールの周囲は、常に摩擦熱が大量発生している場所というわけだ。そしてその摩擦熱は可視光線を発するため、我々の目にも見えるし、撮影もできる、というわけである。
つまりこういうことだ。「ブラックホールの撮影に成功した」と言っても、その画像の中にブラックホールは映っていない。しかし、ブラックホールの周囲を取り巻く「摩擦熱による光」は撮影できる。つまり、「摩擦熱による光がドーナツ状になり、真ん中にぽっかり黒い穴がある」ような画像になるというわけだ。
観測以前から、「もしブラックホールを撮影したらこのように映るはずだ」という予測がなされていた。そして、まさにその予測通りの画像が得られたことで、「ブラックホールを撮影した」ということが確定した、というわけなのである。
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「ブラックホールの撮影」には、科学的にどのような意義があるのか?
ブラックホールの撮影は、我々一般人だけではなく、科学者にとっても大いに興味の的である。もちろんそこには、科学者としての純粋な好奇心もあるだろう。
しかしそれだけではなく、科学的にも意義のあるプロジェクトなのである。
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まずそもそもだが、「もしブラックホールを撮影したら『黒い穴』が映るはずだ」というシミュレーションは存在したが、あくまでそれは理論上の話でしかない。科学の世界では、「理論上そうなる」と「実際そうである」の隔たりは大きい。理論家がどれだけ素晴らしい理論を打ち立てても、その理論が導く予言・予測が実験や観測によって確かめられなければ、科学的には意味を成さないのだ。
つまり、「ブラックホールを撮影したら『黒い穴』が映る」かどうかは、実際に撮影してみなければ確定しない、ということになる。この問題に決着をつけたという点がまず挙げられる。
またブラックホールには、非常に有名な「宇宙検閲官仮説」と呼ばれる仮説が知られており、直接観測によってこの検証も期待されていた。
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ブラックホールというのは非常に単純な構造の天体であり、「特異点(非常に極小な中心部分)」と「事象の地平面(光が脱出不可能になる限界ライン)」の2つの要素のみで構成される。ざっくりとだが、東京ドームのマウンドに置かれたボールが「特異点」で、東京ドームの外壁が「事象の地平面」みたいなイメージでいいだろう。
ブラックホールは、その実在が示唆されるずっと以前から理論的な枠組みが研究されていた非常に特異な天体であり、重力崩壊によって「100%必ず『特異点』が作られる」ことは理論的に分かっていた。しかし「『事象の地平面』が作られるかどうか」は理論面からは判断できなかったのだ。
つまり可能性として、「『事象の地平面』を持たない、『特異点』だけのブラックホールも存在するかもしれない」というわけである。これを「裸の特異点」と呼ぶ。
そして「宇宙検閲官仮説」というのは、「『裸の特異点』が発生することはない」という仮説のことだ。ペンローズという数学者が主張したものだが、証明されているわけではない。そして、もしブラックホールを観測して「裸の特異点」が観測されたら、この「宇宙検閲官仮説」は否定される、ということになるのだ。
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今回の撮影では「裸の特異点」は映らなかったので、この仮説は生き残っている。このように、「ブラックホールの撮影」が何らかの主張の裏付けになるという意味でも重要なのである。
他にも本書では、「ブラックホールの撮影」によってどんなことが確かめられるのかについていくつか挙げられている。そのような複数の成果が期待できるという意味で、このプロジェクトは非常に「お得」だと、著者は考えているようだ。
EHTプロジェクトが誕生したきっかけ
ブラックホールの撮影プロジェクトには、「EHT(事象の地平望遠鏡)プロジェクト」という名前がつけられている。そしてこの計画を率いたのが、シェップ・ドールマンという人物だ。本書ではこのシェップという人物を主軸に置き、EHTプロジェクトがいかにして展開されていったのかを追っていくという構成になる。
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EHTプロジェクトの根幹を成すのはVLBI(超長基線電波干渉計)である。これは、地球上の様々な地域に存在する複数の電波望遠鏡で同時に撮影を行い、そのデータを組み合わせることで、1台の電波望遠鏡では捉えられない対象を撮影する、という仕組みだ。今回のブラックホール撮影では、地球上に存在するほぼすべてのミリ波望遠鏡が総動員されたため、EHTプロジェクトは「人類史上最大の望遠鏡」とも呼ばれている。
そのVLBIの仕組みを作り上げたのがアラン・ロジャースという人物であり、シェップが彼と出会ったことでEHTプロジェクトは始まることになるのだ。
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シェップは非常に優秀な学生だったが、運に恵まれなかったことで不遇な大学院時代を過ごすことになってしまう。最終的には教授から厄介払いされるようにしてヘイスタック観測所に移ることになるのだが、そこでロジャースと出会うことになる。
シェップはVLBIを詳しく理解していたわけではなかったが、その仕組みにロマンを感じた。そしてシェップは上司であるロジャースから、VLBIでサブミリ波を観測するというミッションを与えられることになる。何年もかかるだろう困難な研究だが、上手くいけばブラックホールの観測ができる、と言われたことがきっかけとなって、シェップの中でEHTプロジェクトが生まれたのだ。
ではここから、実際のブラックホール撮影の話に移っていくのだが、その前に1つ、VLBIによって思いがけず証明されることになったある理論の話をしよう。「大陸が動いている」という「プレートテクトニクス理論」だ。
宇宙には「クエーサー」と呼ばれる天体がある。これは地球からもの凄く離れた場所にあるので、地球から見れば「不動の点」のように扱っていい(クエーサーは実際には光速で移動しているが、それが無視できてしまうほど地球から遠く離れている、ということ)。
ではそんな「クエーサー」を、地球上にある2基の電波望遠鏡で観測し続けるとしよう。
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すると、日によって電波の到達時間が変わるのだ。「クエーサー」は「不動の点」と見なせるほど遠くにあるのだから、その到達時間の差は「電波望遠鏡自体が移動していること」によるものと考えられる。しかし、地面に固定されている電波望遠鏡が勝手に動くはずがない。
これはつまり、電波望遠鏡が載っている大陸自体が移動したことを意味している。これによって「プレートテクトニクス理論」の正しさが示されたという。なかなか壮大な話ではないだろうか。
EHTプロジェクトの最大のハードル
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今回のEHTプロジェクトで実際に撮影されたブラックホールは「M87」と呼ばれており、地球から5500万光年離れた場所にある“通常の”ブラックホールだ。
ブラックホールには実は2種類あり、「巨大ブラックホール」と呼ばれている特別なものも存在している。現在、どの銀河にもその中心部には「巨大ブラックホール」が存在すると考えられており、EHTプロジェクトが本命と考えていたのも、そんな「巨大ブラックホール」の1つである「いて座A*」だった。
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どのブラックホールが観測できたとしても快挙ではあるのだが、天の川銀河の中心にある巨大ブラックホール「いて座A*」は中でも重要と考えられている。だからこそ、この撮影が本命なのだ。地球から2万6000光年と、「M87」と比べてもとんでもなく離れているのだが、「巨大ブラックホール」はその巨大さゆえに、通常のブラックホールよりもさらに輝いていると考えられており、見つけやすいという想定だった。
ただ、見つけやすいのだとしても、撮影するハードルは非常に高い。3つの壁をくぐり抜けなければならないからだ。
1つ目は「散乱スクリーン」と呼ばれており、その正体は未だ判然としていないものの、電波が通り抜けるのを妨害する存在として知られている。2つ目は、ブラックホールの周辺を囲む高温のガス。このガスが透明かどうか(つまり電波を通すかどうか)は、実際に観測をしてみなければ分からない。
そして最後が地球の天気だ。先述した通りVLBIは、地球上の様々な地点に存在する電波望遠鏡を同期させ同時に観測を行うのだが、それはつまり、電波望遠鏡が存在するすべての地点で「晴れ」でなければならない、ということを意味する。まあ、晴れでなくとも、「雲が厚くなく、雨が降っていない」という状態ならいいわけだが、すべてとは言わないまでも、電波望遠鏡が存在するほとんどの地域で「天体観測に向く天気」でなければブラックホールの撮影は実現できないのだ。
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この3条件がそろうのは地上で皆既日食が見られるのと同じくらいの偶然だと、後にフルビオ・メリアは語っている
「散乱スクリーン」や「高温ガス」はやってみなければなんとも言えないが、天気については地球上の問題だ。望遠鏡の使用日の調整でなんとかできるのではないか……と考えるのは甘い。というのは、巨大な望遠鏡というのは世界各国が共有しているものであり、1つの研究のために融通できるようなものではないからだ。あらかじめ「使用できる日時」が定められており、その時に「晴れ」であることを祈るしかない、という状態なのだ。
他にも技術的な問題は様々に存在するのだが、この天気の話だけでも、EHTプロジェクトがいかに困難なものであるのか理解できるだろう。
EHTプロジェクトにおける様々な障害
他にもEHTプロジェクトには膨大な難題が山積しており、シェップはその調整に追われ続けた。
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シェップが最後の最後まで納得できないと憤慨していた件がある。チリ高地に存在するALMAという世界最大の電波望遠鏡に関係するものだ。
EHTプロジェクトは複数の電波望遠鏡を同期させる必要があると書いた。そして、正確に同期させるためには「水素メーザー原子時計」と呼ばれる非常に正確な時計を電波望遠鏡に接続する必要がある。
この「水素メーザー原子時計」は軍事目的にも転用可能であり、政府の許可なしには国外に持ち出しができないような代物だ。つまりEHTプロジェクトは、「水素メーザー原子時計」を購入し、政府と交渉して国外へと持ち出し、各電波望遠鏡に設置するという膨大な労力を費やさなければならないことになる。
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そこまでやるのだから、「水素メーザー原子時計」を使った観測はEHTプロジェクトが優先的に行えるべき、と考えてしまうだろう。シェップも当然そう考えた。EHTプロジェクトの資金で設置するのだから、「水素メーザー原子時計」を使用する観測はEHTプロジェクトに優先権があるはずだ、と。
しかしALMAの見解は違った。誰がどんな事情で行ったにせよ、電波望遠鏡に成された設備増強は「オープンソース」のような扱いとなる。そしてその使用に関しては、「最も良い計画を提出した研究機関」を優先する、というのだ。
科学研究の実際を知っているわけではない私からすれば、ALMAの主張はかなりぶっ飛んでいる風に感じられるが、共有財産である望遠鏡の運営という観点からは仕方ない判断なのだろうか。シェップはこの決定に納得できず長年闘ったが、結局結論が覆ることはなかった。
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またこんなこともあった。
EHTプロジェクトには莫大な資金が必要であり、当然さまざまな助成金の申請を行っていた。もちろん助成金の申請には常にライバルがいる。ある助成金の申請でEHTプロジェクトが争っていたのはCARMAという電波望遠鏡だった。つまり、「EHTプロジェクトかCARMAのいずれかが助成金を手にできる」というわけである。
その争いにEHTプロジェクトは勝った。それは喜ばしいことなのだが、CARMAはこの助成金の申請に敗れたことで、「あと1年しか存続できない」ことが決定してしまった。
しかしそれはEHTプロジェクトにとって困る。世界中の電波望遠鏡を同期させるプロジェクトなのだから、使える電波望遠鏡は1つでも多い方がいいからだ。とはいえ、その助成金の申請でCARMAが勝利してしまえば、EHTプロジェクトの資金が足りなくなる。
痛し痒しとはこのことで、様々な条件を同時に揃えなければならないEHTプロジェクトが抱える苦労の象徴のような出来事だと言えるだろう。
そんなこんなで様々な調整を続けたことで、ようやく実際の撮影にこぎつけるところまでたどり着いた。しかしそのタイミングで、予想もしない出来事が起こる。それはEHTプロジェクトと直接的には関係ない出来事だが、これを受けてシェップは気を引き締めることになったのだ。
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「BICEP2」と呼ばれるプロジェクトがあり、この研究グループが「宇宙背景放射のゆらぎを観測した」と発表し、大いに話題を集めていた。しかしその直後、「この発見は空振りかもしれない」という報道が出る。観測データを精査する際に、宇宙の塵に由来するノイズを取り除く過程でミスが起こった可能性がある、と指摘されたのだ。
この研究グループはその指摘に反論できず、最終的に「誤りである可能性」を渋々認めた。彼らの観測は「間違い」だとはっきり指摘されたわけではないのだが、データの精査にケチがついたために、「正しかったかもしれないし、間違っていたかもしれない」という宙ぶらりんな結論に落ち着いてしまったのだ。
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この出来事によってシェップは、「ほんの僅かな疑念も持たれない形で発表しなければならない」と改めて実感し、当初の予定から解析方法を変更する。同一の観測データを3箇所で精査し、その間お互いに分析結果を一切共有しないという体制を整えたのだ。
そして、3箇所で行われた解析の結果はすべて瓜2つと言っていいものになり、彼らは自信を持って結果を発表することができた。
ここで取り上げたのはほんの一部だが、本書ではこのように「プロジェクトの裏側」が詳細に記されていく。科学理論についての本は世の中に多く存在するだろうが、プロジェクトそのものを描く作品は決して多くはないと思うので、興味深く読めるのではないかと思う。
巨大プロジェクトにつきまとう「ノーベル賞問題」
近年、科学研究はその規模が非常に大きくなっている。加速器や望遠鏡などの巨大施設を使用しなければ成果を挙げられなくなり、必然的に関わる人間が膨大となっているのだ。そしてこのような科学研究の実情は、「ノーベル賞を誰が受賞するか」というややこしい問題を引き起こすことにもなる。
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ノーベル賞では、受賞人数や対象が明確に規定されている。「故人には与えられない」「団体は対象外で、あくまでも個人に与えられる」「各賞1年に最大3人まで」などがよく知られているものだろうか。
当然だが、ノーベル賞が発表される以前に内定情報などが伝えられることはない。となれば、数百人、数千人が関わる科学研究においてはあらかじめ、「このプロジェクトの顔は誰なのか」がノーベル賞を選定する委員会にも判別できるように組織を整えておく必要があるわけだ。
そしてこの点で、EHTプロジェクトは大きく混乱することになる。プロジェクトを最初期から主導しているシェップが、規模が大きくなるに連れて、「自分の成果を誰かに横取りされるのではないか」と警戒心を抱くようになったからだ。
そこには、EHTプロジェクトの進展の過程におけるメンバーの変遷が関係している。
元々EHTプロジェクトは、シェップが個人的に集めたメンバーで進められていた。しかししばらくして、主に資金面に問題が生じ、プロジェクトが動かなくなってしまう。そんな状況を知ったハイノという科学者が独自に資金集めを行い、それを手土産にEHTプロジェクトに合流しようとした。本書を読む限りにおいては、ハイノは純粋にプロジェクトのためを思ってそんな行動をしたと感じられる。
しかしシェップはハイノの動きを警戒する。このプロジェクトを乗っ取るつもりなのではないかと考えたのだ。
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シェップは元々大学教授などではなく、観測所に勤める一研究員に過ぎない。だからこそこのEHTプロジェクトに人生を賭けていた。シェップが集めたメンバーだけで完遂できれば、なんの問題もなくシェップの手柄だと判断できる。しかしハイノが合流するということは、改めて組織を組み直す必要が生じるわけだ。
そしてそうなればシェップは、「評議会からプロジェクトリーダーに任命されるかもしれない人」という立ち位置になる。もちろん、任命されれば問題はない。しかし、その保証は確実にあると言えるか? ハイノ側の人物がリーダーに任命される可能性も決してゼロとは言えないし、そうなれば、プロジェクトが成功しても自分の手柄にはならない。
シェップは、プロジェクト進展の過程で常にこのような葛藤に囚われていた。そしてそのことによって、プロジェクト全体が振り回されていくことになる。
このように巨大プロジェクトには「ノーベル賞問題」はつきものであり、これからも同じことが起こることだろう。時代の変遷に合わせて規定が変わるのが一番いいと思うが、それはノーベル賞委員会次第だ。規定が変わらない内は、このような人間臭い問題がつきまとうことになるのだろう。
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しかし、国立天文台副台長である渡部潤一氏(本書の日本語版監修者でもある)が、日本の貢献について解説で詳しく触れている。装置の制作から解析手法の開発など、様々な点で日本も活躍したということが伝わる内容だ。
この記事では触れなかったが、ブラックホールという天体は、アインシュタインの一般相対性理論の方程式から理論的に導かれるものだ。理論主導で研究が進み、その後ブラックホールという天体の実在が少しずつ示唆され、その存在が認められるようになっていった。
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しかし今回のEHTプロジェクトまで、「ブラックホールは本当の本当に存在するのか」という問題は未解決のままだったと言っていい。「ブラックホールが存在すると仮定しなければ説明がつかない現象」について様々に知られていたとはいえ、だからと言って「ブラックホールが存在する」と確実に言えるわけではないからだ。
そういう意味で今回のEHTプロジェクトは、長い年月をかけてアインシュタインが遺した宿題を解き明かしたと言ってもいいだろう。そういう、壮大な物語なのである。
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