目次
はじめに
この記事で取り上げる本
著:マッテオ・モッテルリーニ, 翻訳:泉 典子
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著:マッテオ・モッテルリーニ, 翻訳:泉典子
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この本をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 従来の経済学が前提にする「経済人」は、現実の人間には当てはまらない
- 様々な具体的な事例を元に、私たちが日常生活の中でしてしまう「合理的ではない判断」を理解する
- 「アンカリング効果」「ピークエンドの法則」「予言の自己成就」など有名な話も満載
「言われてみれば確かに」と感じるだろう、非常に現実的な「経済学(心理学)」
自己紹介記事
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『経済は感情で動く』『世界は感情で動く』は、行動経済学の面白い実例満載の入門書。人間がいかに「不合理」な行動を取っているかが理解できる
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この記事では、共にマッテオ・モッテルリーニ著『経済は感情で動く はじめての行動経済学』『世界は感情で動く 行動経済学からみる脳のトラップ』の2作を併せて紹介したいと思う。
私たちは普段、様々な情報を取り込んで総合的に判断し、合理的な決断をしていると考えているはずだ。しかし実際のところ、私たちはとても「不合理」な決断ばかりしている。そのことを明らかにするのが「行動経済学」であり、「経済学」という名前だが実際には「心理学」のような学問だと思えばいい。人間がどうしても陥ってしまう「認知的バイアス」、つまり、「注意深く避けなければ誰もがハマってしまう罠」みたいなものを研究しているというわけだ。
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本書は入門書であり、難しい記述はほとんどない。基本的には、行動経済学が明らかにした「人間の不合理な決断の実例」が多数紹介される作品であり、「行動経済学をなんとなく知りたい」という方にオススメできる作品だ。
「行動経済学」とは何か?
まず、「行動経済学」についてざっくり説明しておこう。これは、心理学者のダニエル・カーネマンらによって創設された学問であり、氏は2002年にノーベル経済学賞を受賞した。
行動経済学が登場する以前の経済学の説明から先に始めよう。従来の経済学にはある大前提が存在する。それが、「人間も組織も、経済に参加するすべての存在は『完全に合理的に』決断を下す」というものだ。「合理的」という言葉をもう少し説明すると、「損失を最小限にし、利益を最大限にする」という感じだろう。また、「一度決断した行為は必ず実行する」という前提も置かれている。このように、「経済学の理論を考える際に想定される経済主体」のことを「経済人」と呼ぶ。
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しかし、私たちが生きる世界にこんな「経済人」はなかなか存在しないだろう。実際には、自分の利益だけではなく他人の利益を考慮することもあるし、短期的な損失よりも長期的な損失を重視する場合もある。一度何かを決断しても考えを変えることなどしょっちゅうあるし、利益よりも損失を優先して選ぶような局面だって実際にはあるはずだ。
そして「行動経済学」では、このような「実際にこの世界に生きている人間」が、どのような「合理性」で経済に参加しているのかを解き明かそうとするのである。私たちは、「経済人」のような「完全な合理性」を持っているわけではない。しかし、行動がランダムで無茶苦茶なわけでもなく、「ある程度の合理性」の範囲内で決断を下している。その「ある程度の合理性」を探っていく学問というわけだ。
私は、従来の経済学を大学などで学んだこともないし、本もあまり読んだことはないが、何かそういう知見に触れる度に「現実的ではない」と感じることが多かった。どうしても「机上の空論」という感覚を拭えないでいたのだ。しかし「行動経済学」の存在を知り、なるほどこれなら納得感があると思った。人間が持つ「合理的な不合理性」みたいなものを浮き彫りにする行動経済学は、アプローチが科学っぽいこともあり、従来の経済学に違和感を覚えてしまう私のような人間でも興味深く受け取れるはずだ。
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それではここから、本書に載っている様々な実例を紹介していこうと思う。
本書『経済は感情で動く』『世界は感情で動く』で紹介される「行動経済学」の様々な実例
2万円のチケットを買い直すか否か
まずは以下の2つの状況において、自分だったらどう行動するか考えてみてほしい。
問A:今日は土曜日で、大好きなオペラがある。
あなたはうきうきと劇場に出かける。入口に近づいたとき、2万円もしたチケットをなくしてしまったことに気がつく。
さてどうしますか? チケットを買い直しますか?
「経済は感情で動く」(マッテオ・モッテルリーニ著 泉典子訳/紀伊國屋書店)
問B:問Aと同じ設定で、いまあなたは劇場の入口にいる。けれども今度は、チケットをなくしてしまったのではない。チケットはまだ買ってないのに、上着のポケットにあったはずの2万円が見当たらないのだ。
さてどうしますか? チケットを買いますか?
「経済は感情で動く」(マッテオ・モッテルリーニ著 泉典子訳/紀伊國屋書店)
さて、あまり考えずに答えを出してみよう。イメージするのは、好きなバンドのライブチケットでも、テーマパークでもなんでもいい。抽選ではなく、お金を出せばいつでも買い直せる、という条件だ。
一般的に多くの人が、「問Aの状況ではチケットを買い直さず、問Bの状況ではチケットを買う」と答えるようだ。確かに私もそうするように思う。たぶんこれは、「一度手に入れたチケットを再び購入すること」が「損」に感じられるからだろう。しかし、よく考えてみれば分かる通り、どちらの状況も「『2万円損した時点』でどうするか」が問われていることに変わりはない。それなのに、失くしたものがチケットなのか現金なのかによって、人間の行動は変化するのである。
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文具店の「妨害効果」
文具店で、ポイントサービスを行うことに決めた。500ポイント貯まると「現金」か「ボールペン」と交換できるキャンペーンだ。さて、以下にA・B・Cという3つの選択肢がある。それぞれの場合で、500ポイント貯めたあなたはどれと交換したいと感じるだろうか?
- A:「500円」or「メタルのスマートなボールペンX」
- B:「500円」or「メタルのスマートなボールペンX」or「メタルのスマートボールペンY」(※XとYは若干デザインが異なる)
- C:「500円」or「メタルのスマートなボールペンX」or「プラスチック製のありふれたボールペン」
さて、それぞれのケースで、あなたはどの選択肢を選ぶだろうか? もし「それがどんなボールペンであれ、ボールペンにはまったく興味がない」という方は、「自分がもらったら嬉しい文房具」に置き換えて考えてほしい。
Aでどちらを選ぶかは、今回の問いでは重要ではない。Aでどちらを選ぶにせよ、BあるいはCで選択が変わるはず、という点にこそポイントがある。一般的に、Bでは「500円」が、Cでは「メタルのスマートなボールペン」が選ばれる傾向が多いそうだが、あなたはどうだろうか?
この選択はこんな風に説明される。Bでは、2種類の「メタルのスマートなボールペン」に差異を見出しにくく選ぶ要因が見つからないので、消去法で「500円」が選ばれやすい。しかしCの場合、「プラスチック製のありふれたボールペン」という選択肢があることで「メタルのスマートなボールペン」の価値が相対的に上がったように感じ、それ故に「メタルのスマートなボールペン」が選ばれる可能性が高い、というのだ。
A・B・Cの違いは「3つ目の選択肢」のみだが、それによって人間の選択に明らかに差が出てしまうというわけである。
この「妨害効果」の存在を知っていたわけではないが、感覚的に理解していたのだろう。私は書店員時代に「同じ著者の本をなるべく並べて置かない」というやり方をしていた。同じ著者の本が並んでいる場合、1冊しか買うつもりのないお客さんは決め手を見つけられず、最終的に「どれも買わない」という選択をするのではないかと考えていたからだ。「妨害効果」のことを考慮すれば、私のやり方もあながち間違いではなかったということだろう。
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試験後に旅行のチケット買うかどうか
以下の3つのケースにおいて、旅行のチケットを買いたい気分になるかどうか想像してみてほしい。
- A:大変だった試験が終わり、その試験に合格していることが分かった
- B:大変だった試験が終わり、その試験に不合格だったことが分かった
- C:大変だった試験が終わり、まだ試験結果が発表されていない
「A・Bの状況であれば、旅行のチケットを買おうと思えるが、Cの場合にはそんな気分にはならない」というのが一般的な結果である。不合格だったことが分かっても旅行のチケットを買おうと思えるのだから、「試験に合格したご褒美」という感覚のはずがない。ではなぜ、試験結果が分からないと買う気になれないのか。それは、「『旅行に行くためのもっともな理由がほしい』という気持ちが強くなるから」だと説明される。あなたはどうだろうか?
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スキーに行きますか?
以下の2つの問いについて考えてみてほしい。
問A:あなたはスキー旅行の予約をした。かなり高い金額を払っているのだが、しかし当日は寒くて風も強くて大雪だった。一歩も家を出たくないのに、もうお金は払ってしまっている。
さてどうしますか?
1:スキーに行く
2:暖かい家で過ごす
「経済は感情で動く」(マッテオ・モッテルリーニ著 泉典子訳/紀伊國屋書店)
問B:問Aと状況は同じだが、一つだけ違いがあって、スキー旅行はプレゼントで当たったとする。さてこの場合どちらを選択しますか?
「経済は感情で動く」(マッテオ・モッテルリーニ著 泉典子訳/紀伊國屋書店)
A・Bの違いは、自分でお金を出したか、プレゼントでもらったかだけだ。さて結果は、Aであればスキーに行くが、Bであれば家にいると答える人が多いという。荒天の中スキーをしても楽しくないかもしれないが、しかし、「自分でお金を払った」という事実を無視することはできないようである。
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「アンカリング効果」の強力さ
ニューヨークで実際にあった出来事から、「アンカリング効果」について考えよう。
ニューヨークで小児科医をしているA先生は、まだ扁桃腺を除去していない11歳の子ども400人を診察して、その中の何人が手術を受けるべきか指示しなければならなかった。A先生は診察をした子どもの45%に手術を勧めた。
同じ町のB先生は、A先生が手術すべきだとは判断しなかった子どもたちを診察した。B先生はその中の46%の子どもたちに手術を勧めた。
C先生は、B先生が手術の必要なしと判断した子どもたちを診察したが、その中の44%に手術を勧めた。
「経済は感情で動く」(マッテオ・モッテルリーニ著 泉典子訳/紀伊國屋書店)
意味が分かるだろうか? A先生は、400人中180人(全体の45%)に手術を勧め、残りの220人には勧めなかった。B先生は、220人の内101人(全体の46%)に手術を勧め、119人には勧めなかった。C先生は、119人の内52人(全体の44%)に手術を勧め、67人には勧めなかった。このような状況だ。
引用した文章は少し分かりにくいが、ここで大事なのは、「B先生は、自分が診ている220人が、『A先生によって手術不要と判断された人』だと知らされていなかった」という点だ。「A先生の見落としにB先生が気づいた」という話ではない。この話の最大のポイントは、「A先生もB先生もC先生も、自分が診た患者の内45%程度は手術が必要と判断したこと」にある。
これは恐らく、「扁桃腺除去手術を受けるべき子どもは全体の45%程度」という事前の先入観のようなものがあったことを示唆しているのだ。恐らく大学でそう教わるか、教科書に書いてあるのだろう。しかし実際には、A先生B先生C先生の3人による診断で、400人中333人(全体の約83%)の子どもが扁桃腺除去手術を勧められたことになる。45%という数字にどんな根拠があるのか知らないが、その数字が頭にあったせいでこんな事態が引き起こされてしまったというわけだ。
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また、こんな例も載っている。グループXの人たちには次の問Aを、グループYの人たちには次の問Bを投げかけるとしよう。
- 問A:紙もペンも計算機も使わずに、1×2×3×4×5×6×7×8の答えを5秒で計算せよ
- 問B:紙もペンも計算機も使わずに、8×7×6×5×4×3×2×1の答えを5秒で計算せよ
当然だが、問Aでも問Bでも答えは同じで、正解は40320である。では、それぞれのグループの答えの平均はどうなっただろうか? グループXの平均は512、グループYの平均は2250だったそうだ。このように差が出る理由は、最初に耳にする「1」「8」という数字にある。「1から始まる掛け算だからそんなに大きくはならないだろう」「8から始まる掛け算だから大きいだろう」という風に考えてしまうが故の結果であり、これもまた「アンカリング効果」によるものなのだ。
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思い込みが現実になる「予言の自己成就」
「予言の自己成就」として知られる認知的バイアスが存在する。これは、予測や願望が実現してほしいと個人が願った時に、それが社会全体で実現してしまうことを指す。分かりやすいのは銀行の取り付け騒ぎだろう。「銀行が倒産する」というデマが広がることで、「銀行からお金を引き出す個人」が増え、その結果本当に銀行が倒産してしまうことがある。これは「予言の自己成就」の一種なのだ。
さて、この「予言の自己成就」、思いこんでいるのが他人であっても効果があるという。こんな実験が知られている。
小学校であるテストが行われた。実施した心理学者はこのテストについて、「子どもたちの潜在的知能を測ることができる」と教師に説明する。教師はそのテストが具体的に何をどう測定するものなのか理解しておらず、テストの結果を分析するのは心理学者の方だ。
さて心理学者は、児童にやってもらったテストを丹念に分析する”フリ”をして、その中から適当な児童4人を選び、「この4人は何ヶ月かの間に飛躍的に知能が伸びるだろう」と教師に告げた。さて、その後どうなっただろうか?
なんと、心理学者が適当に選んだ4人の知能が実際に飛躍的に伸びたのだそうだ。もちろんこれは、「この4人の知能が伸びるのだろう」という気持ちで教師が接していたことによる効果である。しかし、教師は「4人の知能が伸びる」と信じていたのではなく、「『4人の知能が伸びる』という心理学者の主張(思い込み)」を信じていたのだ。つまりこの実験は、他人の思い込みよっても「予言の自己成就」が実現することを示しているのである。非常に面白い実験だと思う。
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ピーク時と終わりの差が重要な「ピークエンドの法則」
それがどんな経験であれ、「『ピーク時』と『終了時』の快苦によって全体の印象が決まる」という「ピークエンド法則」が知られている。例えば、
- A:初めの5分は雑音だらけ、残りの15分は素晴らしい演奏のCDを聴く
- B:最初の15分は素晴らしい演奏、最後の5分は雑音だらけのCDを聴く
という、順番を入れ替えただけの2パターンの状況の場合、Bの方が不快感が増すことが知られている。逆に言えば、「ピーク時」と「終了時」以外の出来事は、全体の印象に大した影響を与えないということだ。この法則は、日常の様々な場面で活用できるのではないかと思う。
本書では他にも、「結腸鏡検査の際、『結腸鏡の先端を何分か直腸に残す』という医学的には意味のない措置を取ることで、全体の苦痛感が和らぐ」という事例が紹介されている。結腸鏡検査は全体的にとても痛いそうだが、結腸鏡を直腸にしばらく残すことで「終了時」の苦痛が減り、それが全体の印象に影響するのだという。とても面白い。
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お祈りしながらタバコを吸って良いか?
「フレーミング効果」もとても興味深い。これは、同じ情報でも「どこに焦点を当てるか」で意思決定に差が出るというものだ。本書にはこんなエピソードが載っている。
若い神父が司教に、「お祈りしながらタバコを吸っても良いか?」と聞いたところ、厳しくNOと言われた。しかし後にその若い神父は、タバコを深々と吸いながらお祈りをしている老神父に出会う。以前司教にNOと言われたという話をすると、老神父は、「おかしいな。『タバコを吸いながらお祈りしてもいいか』と司教に伺った際には、いついかなる時にも祈って良い』と言われたのだが」と返した。
意味が分かるだろうか? 両者はまったく同じことを言っているのだが、「お祈りしながらタバコを吸う」のはダメで「タバコを吸いながらお祈りする」のは良いというわけだ。前者だと「タバコを吸うこと」に焦点が当たっているため、「お祈り」に”ついで感”が出てしまってダメと判断されたのだろう。しかし後者の場合は、「お祈り」にこそ焦点が当たっているため、「タバコを吸うこと」が問題にされなかった、というわけだ。
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銃とプールはどっちが危険?
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息子が友だちの家に遊びに行きたいと言う。その友人宅に、「銃がある」と知った時と「プールがある」と知った時、どちらが「危険だ」と感じるだろうか?
普通に考えれば「銃の方が危険だ」と感じてしまうだろう。しかし本当にそうだろうか?
アメリカでは、6000万戸の家にプールがあり、銃は2億丁存在する。さてそんなアメリカでは毎年、10歳以下の子どものうち約550人がプールで溺死して亡くなるという。一方、銃で死亡するのは約175人である。死亡する可能性でいえばプールの方が危険だと言えるのだ。
この話は「利用可能性」に関わっている。私たちは「銃の危険性」の方がパッと頭に浮かぶので、「銃の方が危険だ」と考えてしまう。しかしデータに基づけば、「プールの方が危険」と感じなければならないのである。これもまた、人間の不合理性と言っていいだろう。
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自分に都合の良い情報だけ信じたい
おみくじや占いで、「悪いことは信じないけど良いことは信じる」みたいに考えてしまう人は多いのではないだろうか。このような受け取り方には「自己奉仕バイアス」が関係している。これは、ある行動や事象の説明の際に、自分にとって都合が良いように判断を歪めてしまうことを指す。
例えば医者から、「このまま喫煙を続けていれば肺がんになることは避けられません」と言われたとする。普通なら喫煙を止めなければならないが、本人としては喫煙を止めたくはない。だから、「この医者のアドバイスは聞かなかったことにしよう」と考えてしまう。一方、同じ人が、ネットで「食事の際グラス1杯の赤ワインを飲むと健康に良い」という、医学的根拠は定かではないな情報を目にしたとしよう。この場合、「赤ワインを飲むくらいで健康になれるなら」と、この情報を受け入れてしまうのである。本当に健康になりたいのであれば、赤ワインを飲むより禁煙が先のはずだが、そのような合理的な判断はなかなか難しいというわけだ。
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「確率」を判断することはとても難しい
最後に、人間がいかに「確率的な判断」が不得意かが理解できる問いを紹介するので、少し考えてみてほしい。
ある病気についての検査では、5%の確率で間違いのイエスが出る(間違いのノーはゼロ)。この病気は1000人に一人の割合で発生するのだけど、病気の疑いがあるかどうかとは関係なく検査を受けた人たちがいた。ある人の結果が「陽性」と出た。この人が実際にその病気を持つ確率はいかほどか?
「世界は感情で動く」(マッテオ・モッテルリーニ著 泉典子訳/紀伊國屋書店)
ポイントを整理しよう。
- 検査する病気は「1000人に1人が罹患する」ことが知られている
- 検査には一定の間違い(本来は病気ではないのに病気だと判定されてしまう。つまり「偽陽性」)があり、その割合は5%である
- この病気の検査をあなたが受けて「陽性」と判定された場合、実際にこの病気を罹患している確率は何%なのかが問われている
さて、どうだろう? この問いを、現職の医者にしてみると、大多数が「95%」と回答するそうだ。しかしこれは誤りである。
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重要なポイントは、「病気の疑いがあるかどうかとは関係なく」という部分だ。もしこの検査を、「病気の疑いのある人」だけに受けさせた場合、「95%」が正解だろう。しかしこの問いでは、「病気の疑いがあるかどうかに関係なく無作為に検査を受けさせる」のである。だから以下のように考えなければならない。
例えばこの検査を1000人が受けたとしよう。この病気の場合、「1000人に1人が罹患する」のだから、この検査を受けた1000人の内、実際にこの病気の罹患者は1人だけで、残り999人は病気ではない。一方、検査では5%の偽陽性が出るのだから、999人の5%である約50人が「陽性」という検査結果を受け取るはずだ。
つまりこの検査を1000人に対して実施すると、「実際にこの病気に罹患している1人」と「偽陽性の50人」に「陽性」判定が届くことになる。だから、もしあなたが「陽性」判定を受けた場合、実際にこの病気に罹っている確率は、51分の1、約2%と考えるべきなのだ。
これは、「検査の精度」だけではなく、「病気の発生確率」によっても「陽性」判定の意味が変わってくるということであり、この辺りを正しく理解していないと事実が捉えられなくなってしまう。このように「確率」は、私たちの日常に大きく関わるものでありながら、人間が正確に判断することが難しいものでもあり、「確率」が関わる事柄は慎重に判断しなければならないということになるのである。
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著:マッテオ・モッテルリーニ, 翻訳:泉 典子
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いかがだろうか? この記事で紹介した事例は、行動経済学の中でもメジャーなものが多く、どこかで耳にしたことがあるものもあったかもしれない。他にも、「主婦がスーパーのチラシを見比べて1円でも安い商品を探してはしごしする理由」「宗教の勧誘の際に無料の雑誌を持ってくる理由」など、経済活動における人間の不合理な判断が様々に示されていく。とても日常的な話題が多く、興味を持って読み進められるのではないかと思う。
決して本書である必要はないが、「自分がどれほど不合理な決断をしているのか」を理解するために、行動経済学の本は何か1冊読んでみることをオススメする。心理学的な話が多く、人間の不可思議さを知ることができるという意味でも興味深いのではないかと思う。
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