目次
はじめに
この記事で取り上げる映画

「水の中で深呼吸」公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
「この『感情』は『好き』でいいのか?」という「確認作業」について今まで想像したことがなかった
いや確かに、「自分が知ってる『好き』とは違う」みたいに悩んじゃう段階はあるよなぁ
この記事の3つの要点
- 「他人の評価」が容易に確認できる世の中では、「自分の感覚は正しいのか?」という「答え合わせ」をしたくなってしまうだろう
- 「女であることの価値」を押し付けようとする母親に嫌悪感を抱かされる
- 水泳部部員たちの「ベトっとしていない関係性」が凄く素敵だなと思う
今の時代に特有だろう様々な「ややこしさ」が丁寧に描かれている作品で、とても興味深かった
自己紹介記事
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映画『水の中で深呼吸』を観て、「確かに、『好き』って感情はそんなすぐにくっきりはしないよな」って思った
本作『水の中で深呼吸』は、物語としてメチャクチャ良いわけではなかったのですが、全体の雰囲気が結構好きな作品でした。観て良かったなと思います。
全然注目してなかったけど、「映画『うみべの女の子』の石川瑠華が主演」だって知って観ようと思ったんだよね
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「『好き』を確認する作業」について改めて考えさせられた
本作を観ながら、「なるほど、確かになぁ」と感じたことがあります。それは「『好き』を確認する作業」についてです。
私たちは子どもの頃から、マンガやドラマ、ゲームなどで当たり前のように「恋愛」的なものに触れるし、そして少なくとも私が子どもの頃のそれはほとんど「男女間」のものだったと思います。今の時代は、「LGBTQ+」的なものも当たり前に描かれるようになっていると思いますが、それでも主流と言えるほどではないでしょう。
まあそんなわけで、自分が「異性」を好きになった時には、特に意識することなく「今のこの感情は、マンガとかで触れてきたあれだ」と考え、大して戸惑うこともなくその「好き」を受け入れたり、その「好き」を起点に行動できたりするだろうなと思います。
こういうのってホント、教育っていうか洗脳みたいな側面があるから、子どもの頃にどういう情報に触れるかはデカいよなぁ
これからは世の中的に「同性カップルが子育てする」みたいな状況も増えるだろうし、また大きく変わりそうだけどね
では、「同性」に対して同じような感情を抱いた場合は、どのような心の動きになるのでしょうか? 私は今までそうなったことがないので考えもしなかったのですが、少し想像してみると「何だこれ?」みたいな感じから始まりそうな気がします。「自分が今まで何となく理解してきた『好き』とは、ちょっとなんか違うみたいだぞ」という疑問から入り、「この感情は一体何なんだろう?」と「確認する作業」みたいなものが間に挟まるような気がしました。
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特に、「他者を『好き』になったことがない人」であれば余計にそうなるでしょう。例えば「異性」を好きになった経験があるなら、その後「同性」を好きになった場合に、「『異性』の場合と比較してどうなのか」みたいな判断も出来るでしょうが、最初に「同性への好き」を自覚した場合には、比較対象もないわけで、余計に判断が難しくなるだろうと思います。「この『好き』は、本当に『好き』なのか?」みたいに立ち止まってしまうでしょう、きっと。
言われてみれば凄く当たり前の話だなって思うけど、今まで考えたことなかったよね
自分や周りの人がそういう感じでもない限り、なかなか想像する機会がないもんなぁ
では、「同性」にそういう感情を抱いた場合、どのようにしてそれを「好き」だと確定させるんでしょうか? それまでに触れてきた情報から、「『好き』は異性に向けられるべきもの」みたいに考えていたとしたら、「『同性』に向いているこの『好き』は、やっぱり『好き』とは違うんだろうか?」という思考から抜け出すのは難しい気がします。しかも、「相談しにくいこと」だと直感できているはずで、だから1人で悶々と考え続けるしかありません。そういう場合、どこかで「やっぱりこれは『好き』でいいんだ」と決められるものなのか、あるいは「よく分からない」というモヤモヤを引きずりながらずっと進むことになるのか。どうなんだろうなと思います。
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それにそもそもですが、「好き」という感情にはかなりのグラデーションがあるはずです。ペットや家族に向けられる「好き」はやはり「恋愛的なもの」とは区別されるでしょう。だから、「この『好き』は『恋愛的な好き』なのか、あるいは『そうじゃない好き』なのか」みたいなことも考えなければなりません。
いやもちろん、この「好きのグラデーション」の話は「異性」にも当てはまりますが、ただ「同性」に向いている方がやはりややこしいでしょう。「同性」の方が、「友情と恋がごっちゃになってる」みたいな状況が生まれやすいからです。
特に最近では「クワロマンティック」っていう、「他者に抱く好意が恋なのか友情なのか判断できない」みたいな性的指向も知られるようになったしね
そもそもパキッと区別できるようなものでもないだろうし、ややこしいよなぁ
私は、「ボーイズラブ(BL)」を初めとした「同性愛」を描く色んなジャンルの作品に触れてきたので、「同性愛的なもの」に対する知識・感覚はそれなりに持っているつもりでいます。ただ、「『同性』に向いたこの感情が『好き』なのか確定できない」みたいな話にはあまり触れたことがなく、本作『水の中で深呼吸』を観ながら「なるほどなぁ」と感じる場面が多かったです。
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「他人の評価」を気にして、「自分の感じ方」を手放してしまっているのかもしれない
さて、そんなに「同性に向いた『好き』の捉え方の難しさ」について考える一方で、私は同時に、「この点には世代差があるかもしれない」とも感じました。
若い世代についてはよく、「『他人の評価』を気にする」みたいな話を見聞きすることがあります。「別に年齢関係なくない?」と感じるかもしれませんが、私が言っているのは「他人の評価」であって「他人からの評価」ではありません。例えば、「本や映画に触れても、『自分がどう感じたか』より『他の人がどう評価しているのか』を重視してしまう」みたいな話です。
「自分が『面白い』と感じた作品を、他の人も『面白い』と思っているのか確かめたい」みたいなことらしいよね
要するに、「自分の感覚が”合ってる”のか答え合わせをしたい」ってことらしいけど、なんだかなぁ
これは、SNSなどで簡単に「他人の評価」を調べられてしまう時代だからこその行動なのでしょう。ただそんなやり方をしていたら、「自分が本当はどう思っているのか?」という感覚を見失いそうだよなぁと感じたりもします。
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そして、そういう「自分の感覚以上に他者の評価を気にしてしまう」なんて振る舞いがデフォルトになっているとすれば、「好き」に対しても同じように感じているのかもしれません。つまり、「自分ではこの感情を評価できない」みたいに考えているんじゃないかということです。「自分がどう感じたか」以上に「他者がどう思っているか」の方に目が向いているとしたら、「『自分の感覚』に対する感覚」が鈍っていてもおかしくないように思います。
また、本や映画は「自分の外側」にあるので、「他の人がどう評価しているのか」を知ることも出来ますが、自分の感覚は「自分の内側」にしかないので、他者の評価を知る機会はまずありません。つまり、「『他者の評価』と『自分の感覚』をすり合わせて整合性を取る」みたいな、普段しているやり方が通用しないというわけです。そういうこともあって、「この『好き』をどう扱ったらいいかわからない」みたいになってしまうのかもしれないと思ったりもしました。
私の解釈が正しいなら、結構大変な世の中だよなぁって思う
「自分の感覚」を信用せず「他者の評価」とハイブリッドで色んな物事を捉えることで、もしかしたら何らかの「生きやすさ」に繋がっていたりもするのかもしれません。しかし一方で、そんな振る舞いのせいで、「自分の内側にしかないもの」に対しても「自分の感覚」だけでは評価が出来なくなっているとしたら、それは結構しんどいんじゃないかとも感じます。私は「自分がどう感じるか」ばかりをひたすらに突き詰めて(文章を書いて)きた人間なのでなかなか共感できない感覚ではありますが、もしそういう状況にいるのであれば、少しずつでもいいので「自分の感覚」を深堀りしていく訓練をした方がいいんじゃないかと感じました。
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映画『水の中で深呼吸』の内容紹介
高校1年の葵は、同じ水泳部の日菜のことがとても気になっている。でも、この気持ちが何なのかはよく分からない。プールから上がる時に手を握って引っ張ってくれた時のあの感覚。これは一体、何なんだろう?
水泳部では、レギュラーを固める2年が1年に嫌がらせをするのが常態化していた。そんなある日、嫌がらせを受ける日菜を見かねた葵が歯向かってしまう。そして結局、「上級生と下級生でリレー対決して決着をつけよう」という話に落ち着いた(というか、押し切られた)。1年だけでは実力不足で明らかに勝ち目はない。しかしそれ以上に問題だったのは、同じ1年の反応だった。多くが「先輩の嫌がらせなんか我慢してやり過ごせばいいじゃん」と思っており、どうも日菜もそちら側のようなのだ。葵は自身の振る舞いが正しかったと思っているのだが、しかし、日菜の反応を知り、上級生に歯向かったことを少し後悔してもいる。
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そんな葵の部屋に当たり前のように上がり込むのは、水泳部で幼馴染の昌樹。葵の噂を耳にしたようで、励ましてくれた。母親から「昌樹君となら安心なのに」と暗に付き合うように促されるほど昔からよく知った相手で、それもあって葵としては異性として見れる相手ではない。だから葵は、昌樹で試してみることにした。昌樹の手を握ってみて、日菜への感情の正体を探ろうとしたのだ。
昌樹は女癖が悪く、水泳部内でも声を掛けまくっては、興味を持って近寄ってくる人を手当たり次第に食い散らかしている。しかし彼もまた、人知れず悩みを抱えていた。自分の想いが叶わないことをはっきりと理解しているのだ……。
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本作『水の中で深呼吸』は、主演の石川瑠華以外の役者が、全員ではないにせよあまり演技が上手くなかったり、あるいは、「普通ってなんだろうね?」みたいなことをセリフとして言わせてしまったりと、「むむむ」と思う部分もそれなりにはあったのですが、全体的には良い雰囲気で好きなタイプの作品でした。特に葵を演じた石川瑠華はやっぱりいいですね。映画『うみべの女の子』も凄く素敵でしたけど、本作でも「なんとも言えないモヤモヤを抱えた少女」を演じていて、その存在感は絶妙だなと思います。また見た目でも、「女の子女の子した雰囲気」も「そうじゃない雰囲気」もどちらも醸し出せるので、その佇まいも葵という存在のリアリティに寄与している感じがしました。
映画『うみべの女の子』の時も、22歳で中学生役だったらしいし、それで成立するのは凄いよね
さて、そんな葵のキャラクターを引き出すために用意されていると言ってもいいだろう存在が彼女の母親です。「そこはかとなく嫌な雰囲気を醸し出す人物」であり、しかも「悪意がない」ことが伝わってくるのが余計に鬱陶しいなと感じました。彼女は娘に、「女の子なんだから」「将来どんな人と結婚するんだろうね」「これ、似合うと思って買ってきた(といってフリフリの服を渡す)」みたいなことをナチュラルに口にします。こんなの、ある種の「洗脳」でしょう。
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母親は大前提として「女性性ならこうあるべき」みたいな価値基準を持っているわけですが、さらにそこには「私の娘なんだからこうであってほしい」という願望も加わるので余計にややこしくなります。そして、母親からそんな風にあれこれ言われている当の本人は、「自分の心が『男』になる瞬間もある」と認識しているわけです。いや、これはキツいだろうなぁと思います。
親子関係にも色んな難しさがあるとは思うけど、個人的には「母娘」が一番ややこしいだろうなって思ってる
「呪い」みたいなものを当たり前のように植え付けていくイメージがあるよね
母親とのやり取りで最も酷かったのが、葵が母親に「もし私が男の子だったら、そんなに心配しなかった?」と質問するシーンです。この日は上級生と喧嘩した日で、葵を含む何人かが服のままプールに落ちたので、葵はずぶ濡れのまま家に帰りました。そしてそれを見た母親があれこれ心配する言葉を並べ立てている時に、「男の子だったら?」と聞くわけです。
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これに対して母親は「うん、そうだと思うけど」と悪びれることもなく返していました。もちろん、物語的には当然そういう返答であるべきだし、ストーリー的に違和感はありません。ただ、実際にこんなやり取りになったとしたら、本当にイライラするだろうなと感じました。マジでやってられん。
さて、この点についてはもう少し詳しく見ていくことにしましょう。母親の「うん、そうだと思うけど」はもちろん本心なんでしょうが、本心なんだとしてもそんな風に口にすべきではなかったと思います。というのも、その時の葵の雰囲気的には明らかに「何かを訴えたくてそんな言い方をした」からです。それを汲み取るべきだったでしょう。もちろん、「え、そんなことないよ」みたいな返答が正解だったかは分かりません。ただ間違いなく、「男の子だったらそんなに心配してないと思う」みたいな言い方は、この時の葵にとっては最悪でしかなかったでしょう。
何故なら、葵はまさにこのやり取りを通じて、「母親は、私が『女』だから価値があると思ってる」と理解したはずだからです。
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これが嫌悪されるってことが理解できない親もいるだろうし、そのことがホントに理解できないわ
母親が葵のことを「自分の子どもだから大事」だと思っているのであれば、当然、「男の子でも同じように心配するよ」みたいな返答になるでしょう。しかし母親の反応はそういう感じではなかったし、それは明らかに「葵が女の子だからお母さんは嬉しいんだよ」という意味を含んでいるはずです。そしてその事実は、「自分の中には『男』がいるかもしれない」という感覚を抱き始めた葵にとってはまさに「呪い」としか言いようがないと思います。
母親のそんな価値観を知れば知るほど、葵は少なくとも母親には「自分の感覚」を伝えられなくなるでしょう。もちろん母親は、葵が「同性への好意」を抱いていることなど知らないわけで、仕方ないと言えば仕方ないのですが、個人的にはやはり「ちょっと想像力が足りない気がする」という風に見えました。メチャクチャ嫌だなと思います。
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学生たちの「ベトっとしていない関係性」がとても素敵だった
凄く良かったのは、学生たちの「ベトっとしていない関係性」です。捉え方次第で良し悪しは変わりそうですが、私としては「こういう人間関係って結構理想なんだよなぁ」と感じたりしました。
これが若い世代のデフォルトなのかはよく分かんないけどね
まあさすがに、そう大きくは外れてないだろうとは思うけど
彼女たちのベースには「去る者追わず」「他者に踏み込まず」みたいな感覚がある気がします。「部活辞めるよ」と口にした同級生に「いいんじゃない」って言うとか、「『もしかしたら嫌われたかもしれない』と思いつつも、特に何のアクションも起こさない」みたいな振る舞いが随所に描かれていて、個人的には凄く良かったです。もちろん人によっては、「もっと踏み込んで関わる方がいいに決まってる」みたいに感じたりもするでしょうが、私はこういう関わり方、結構良いなと思っています。
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あくまで私の勝手な受け取り方ですが、今の若い世代は「他者に自分の感覚を押し付けること」を殊更に恐れているような印象があります。そしてもしかしたら、その対比構造を分かりやすくするために、本作では葵の母親を「他者に自分の感覚を押し付けまくる人」に設定しているのかもしれません。
若い世代はたぶん、「相手の『感覚』に関与するのは良くないことだ」みたいに感じていて、だから、「相手の感覚と自分の感覚が運良く合うなら関わりましょう」「そうじゃないなら、相手を無理して変えてまで関わろうとはしません」みたいな発想が強いんじゃないかと思います。そして私は、そういうのって結構良いよなと感じているのです。
っていうか、本来的にはそんなの当たり前の話なんだけどね
「自分にとって都合が悪いから、相手の感覚を変えようする」なんて、あまりに暴力的だもんなぁ
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ただまあ、そういうスタンスを強く持っているが故に、恋愛に限らずですが、「他者と深い関係を築くことへの躊躇」みたいなものも大きくなっているのかもしれません。「相手の『感覚』に関与して、自分のことを好きになってもらう(ために努力する)」みたいな振る舞いに「抵抗」を感じているとしたら、なかなか「恋愛」には発展しないでしょう。そういう難しさはもちろんあるでしょうが、ただ、個人的には今の若い世代のコミュニケーションの方が「健全」な気がしているし、「安心感」みたいなものさえ感じさせるなと思ったりもします。
そんなわけで、かなり繊細な感情や関係性が描き出される物語で、なかなか興味深かったです。
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最後に
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メチャクチャどうでもいいことですが、エンドロールに「エグゼクティブプロデューサー:King Guu」と表示されたので、「King Gnuがプロデューサーなん?」と思ったのですが、全然別人でした。ま、ホントどうでもいい話ですが。
派手さのない物語ではありますが、「『好き』を確認する作業」にはハッとさせられたし、言語化しがたい様々な葛藤が描き出されている点も良かったなと思います。
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映画『生きててごめんなさい』は、「ちょっと歪な共依存関係」を描きながら、ある種現代的な「生きづらさ」を抉り出す作品。出版社の編集部で働きながら小説の新人賞を目指す園田修一は何故、バイトを9度もクビになり、一日中ベッドの上で何もせずに過ごす同棲相手・清川莉奈を”必要とする”のか?
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「ゲイの男性が、拘置所から出所した20歳の男性と養子縁組し、親子関係になる」という現実を起点にしたドキュメンタリー映画『二十歳の息子』は、奇妙だが実に興味深い作品だ。しばらく何が描かれているのか分からない展開や、「ゲイであること」に焦点が当たらない構成など、随所で「不協和音」が鳴り響く1作
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映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』は、私にグサグサ突き刺さるとても素晴らしい映画だった。「ぬいぐるみに話しかける」という活動内容の大学サークルを舞台にした物語であり、「マイノリティ的マインド」を持つ人たちの辛さや葛藤を、「マジョリティ視点」を絶妙に織り交ぜて描き出す傑作について考察する
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「実は私は、恋愛的な関係を求めているわけじゃないかもしれない」と気づいた著者ムラタエリコが、自身の日常や専門学校でも学んだ写真との関わりを基に、「自分に相応しい関係性」や「社会の暴力性」について思考するエッセイ。久々に心にズバズバ刺さった、私にはとても刺激的な1冊だった。
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涙腺がぶっ壊れたのかと思ったほど泣かされた映画『彼女が好きなものは』について、作品の核となる「ある事実」に一切触れずに書いた「ネタバレなし」の感想です。「ただし摩擦はゼロとする」の世界で息苦しさを感じているすべての人に届く「普遍性」を体感してください
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生きていると、「常識的な考え方」に囚われたり、「普通」「当たり前」を無自覚で強要してくる人に出会ったりします。そういう価値観に合わせられない時、自分が間違っている、劣っていると感じがちですが、そういう中で一歩踏み出す勇気を得るための考え方です
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普通って何?【本・映画の感想】 | ルシルナ
人生のほとんどの場面で、「普通」「常識」「当たり前」に対して違和感を覚え、生きづらさを感じてきました。周りから浮いてしまったり、みんなが当然のようにやっているこ…
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