【感想】映画『ファーストキス 1ST KISS』は、「過去に戻り未来を変える物語」として脚本が秀逸(監督:塚原あゆ子、脚本:坂元裕二、主演:松たか子、松村北斗、吉岡里帆、森七菜、リリー・フランキー)

目次

はじめに

この記事で取り上げる映画

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いか

この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ

この記事で伝えたいこと

「過去にタイムスリップして未来を変える」系の物語として新機軸であり、実に面白い

犀川後藤

こんなよくある設定をベースに、よくもまあこれほど魅力的な物語を生み出せるものだなと思う

この記事の3つの要点

  • 主人公は、タイムスリップをし終えた後でさえ、当初は「未来を変えるために行動しよう」などとは考えていなかった
  • 「ある時点で夫婦関係は絶望的に破綻していた」という設定が物語をさらに面白くしている
  • 着地のさせ方が難しい物語だと思うのだが、その点も絶妙で、個人的にはとても好きな終わらせ方だった
犀川後藤

この記事を読んでもどんな物語なのか想像もつかないでしょうが、とても魅力的で面白い映画です

自己紹介記事

いか

どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください

坂元裕二脚本の映画『ファーストキス 1ST KISS』は、「過去に戻って未来を変える」というよくある物語を実に魅力的に描き出す作品だ

一風変わった設定により、「過去に戻って未来を変える」系の物語として異色作に仕上がっている

ホント、よく出来た物語だったなと思います。さすが坂元裕二脚本作という感じです。「過去にタイムスリップして未来を変える」なんてストーリーは世の中に溢れかえっているわけですが、本作『ファーストキス 1ST KISS』はかなり新機軸というか、大分変わった設定・構成の物語で、実に面白い作品でした。

犀川後藤

坂元裕二脚本のドラマはあんまり観てないんだけど、映画はちょいちょい観る機会があって、毎回ホント凄いなって思う

いか

よくもまあこんな物語を思いつくよなって感じだよね

さて、「過去に戻って未来を変える」系の物語というのは一般的に、大きく2つのパターンに分けられるように思います。1つは、「『手違いで過去に介入してしまったせいで、このままでは未来がおかしなことになる』という状況に対して、元の状態に戻すために奮闘する」というもの。そしてもう1つが、「現在にいる時点で『変えたい過去』があり、その改変を目的として過去へ行き奮闘する」です。大体どちらかに分類されそうな気がするのですが、本作はそのどちらでもありません

本作の物語は、「理由も分からず、突然過去へとタイムスリップしてしまう」というところから始まります。主人公の1人である硯カンナは偶然、過去のある時点へと戻る手段を手に入れました。それが15年前の2009年8月1日で、彼女と夫が出会った日です。15年後からやってきた硯カンナは、旧姓の高畑カンナとはまだ知り合っていない硯駈(すずり・かける)と”再会”したのでした。

いか

文字で説明しようとするとどうしてもややこしくなるけどね

犀川後藤

映像で見れば難しいことなんて別にないんだけど

さて、最初の「タイムスリップ」から戻ってきた硯カンナは、この時点ではまだ「未来を変えるために行動を起こそう」などとは考えていません。まあそりゃあそうでしょう。彼女は、訳もわからずたまたま「タイムスリップ」に巻き込まれただけなのです。さらに「タイムスリップ」と言ったって、彼女が行けるのは「2009年8月1日」という特定の1日のみ。さらに、詳しい状況には触れませんが、カンナは8月1日の20時頃までしかその世界にいられません(いられないわけではないのですが)。そんな短い時間じゃ、「何かしよう」なんて発想になったりはもしないでしょう。というかそもそも、彼女が過去に戻った時間帯(彼女がやってくるのは、毎回8月1日の昼ぐらいです)はまだ、高畑カンナと硯駈は出会ってもいないわけで、普通は「そんな硯駈と関わったって何の意味もない」みたいに考えるんじゃないかと思います。

で、その後硯カンナは「過去を変えるための行動」を取るのですが、まさに絶妙なきっかけが用意されていて、見事だなと感じました(一応、そのきっかけには触れないでおくことにしましょう)。観客としては、「なるほど、そういう状況であれば『過去を変えるための行動』に踏み出そうと考えるだろう」みたいに感じられるし、よく出来てるなと思います。

犀川後藤

明らかにフィクション的な設定でも、細部でちゃんとリアリティを保とうとするのは凄く良いなって思う

いか

そういう部分から説得力が生まれる感じするもんね

「最悪の夫婦関係」から「ファーストキス」に至るまでの実に絶妙な展開

また、本作の設定で興味深いと感じたのが、「タイムスリップした時点で、硯夫妻の関係は破綻していた」という点です。そもそも、「物語が始まった時点で硯駈は既に亡くなっている」のですが、2人は駈が亡くなる少し前に離婚届を出そうとしていたぐらい、夫婦としての関係が綻んでいました。そしてこの設定も、本作を面白くする要素になっていると言えるでしょう。

本作『ファーストキス 1ST KISS』では、割と早い段階で「夫婦関係が悪化していく過程」がダイジェストで描かれます冒頭のシーンは「駈が命を落とす瞬間」の描写なのですが、実はその時点で夫婦関係は破綻していたため、カンナは夫の死に対して複雑な感情を抱いていました。もちろん「悲しい」という気持ちはあるわけですが、夫はその死の状況から世間的には大きく称賛されていて、だからマスコミから「悲嘆に暮れる妻」みたいな姿が求められもします(いや、求められている気がするだけですが)。そして、世間が思うほどには、夫の死に対して強く感情が動かなかったのです。

いか

こういう状況は凄く嫌だよね

犀川後藤

「事情を知らない人からステレオタイプ的に見られる」なんて、不愉快でしかないよなぁ

そんなわけで、最初のタイムスリップで若い頃の夫に“再会した”カンナは、駈とやり取りした後すぐに逃げてしまいましたついこの間まで、同じ家に住んでいながら会話も交わさないような関係だったのに、そんな夫と同じ顔をした人が自分に優しく振る舞ってくる状況に強烈な違和感を覚えてしまったのだと思います。

そもそもカンナは「動物も人間も嫌い」みたいなことを言っていたし(人間を嫌いになったのは夫の死後だろうと思いますが)、「もう一度夫に会いたい」みたいな気持ちも別に持っていなかったでしょう。関係が悪化していたのだから当然と言えば当然ですが、カンナにとって夫は「かなりどうでもいい存在」になっていたのだと思います

いか

しかしホント、好き同士で結婚してるはずなのに、そういう関係になっちゃうのは残酷よね

犀川後藤

恋愛と結婚は違うって話なんだろうけど、だったら「恋愛から結婚」ってルートにしなきゃいいのにって思っちゃう

そして本作では、そんな「最悪」と言っていい状態から、「『15年後の未来から来た硯カンナ』と『高畑カンナと出会う直前の硯駈』の関係性」が様々に変わっていく感じが凄く面白かったです。どんな風に変わっていくのかについて具体的には触れませんが、客観的に捉えれば「かなり捻じ曲がった形に変化していく」わけで、まさに本作の特殊な設定ならではだなと感じます。もちろんそれは、「(未来の)夫が死なずに済む可能性をあれこれ模索した」というプロセスがあるからこそ説得力が生まれる展開なわけで、ホント、「よく出来てるなぁ」という感じでした。

そして最終的に、物語は「もうそういう形にしか行き着かないよね」という展開になり、そしてそのような流れの延長として、タイトルにあるような「ファーストキス」に辿り着くというわけです。「なるほどなぁ」という感じでした。

いか

おんなじことばっかり書くけど、ホントに上手いよね

犀川後藤

エンタメ作品としてシンプルに面白いんだけど、その上で、随所に「上手いなぁ」って感じるポイントがあるって感じ

さて、本作のような物語は「どう着地させるか」がかなり難しい気がするのですが、本作はこの点に関しても非常によく出来ていたなと思います。全体の展開を踏まえれば「そうなるしかないよな」という結末だと言えるのですが、決してそれだけではなく、「なるほど、そう来ましたか!」と感じさせる着地でもあり、個人的には結構好きな終わらせ方でした。

それで、本作を観て感じたのが、これは別に「結婚」に限る話ではありませんが、「『1周目』のことを知った上で『2周目』を生きる」ってのは凄くいいよなぁ、ということです。特に、「1周目が失敗」だと分かっているならなおさらでしょう。まあ実際にはそんなこと不可能なわけで、考えるだけ無駄な話ではあるのですが、「こんな風に出来たら最高では?」と思わずにはいられませんでした

いか

未来ではもしかしたら、「AIが『1周目』をリアルにシミュレーションする」なんてサービスが出てくるかもしれないけどね

犀川後藤

「仮想空間でその『1周目』を圧縮して体験する」みたいな機能もあれば、サービスとしては成立し得るかも

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最後に

この記事ではざっくり物語の展開に触れましたが、しかし、本作を観ていない人には「2009年8月1日の行動によって、2024年に死んでしまう予定の人を救おうとする」なんて展開はなかなか想像出来ないんじゃないかと思います。これも上手いなと感じたポイントです。そして、そんな「普通なら不可能だろうミッション」に何度も挑戦する硯カンナの姿や、うんざりするほど繰り返される「初めまして」のやり取りなども絶妙で、とにかく、全体的にストーリーテリングが抜群に上手かったなと思います。

さらに言えば、こういう物語の場合、特殊な設定である「タイムスリップ」という要素が強く浮き上がりそうなものですが、本作の場合はそうはならず、「作品が有するメッセージ性」みたいなものがくっきりと浮かび上がる感じがあって、その辺りもさすがだなという感じでした。

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