目次
はじめに
著:カレー沢薫
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この記事で伝えたいこと
頑張ったところで足元を掬われる恐怖と隣合わせなら、頑張らずに穏やかに生きた方がいい人もいる
100点を目指す生き方は、99点になる恐怖と闘う生き方でもあります
この記事の3つの要点
- タイトルは編集者がつけたので、内容とはあまり合ってない
- 勝利は敗北の始まりでしかない
- 減点の恐怖に怯えるくらいなら、最初から勝つ必要なんてないのではないか
ま、とにかく、爆笑しながら読めるエッセイなんで、楽しく読んでくれ
この記事で取り上げる本
著:カレー沢薫
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「負ける技術」という名前から、本書を生きる術を学ぶ指南書だと思って手にとった方もいらっしゃるかもしれない。だが実はタイトル自体が担当編集による後付けなので、役に立つことはいっさい書かれていないのだ。
などと言いきってしまうと大半の人がレジまで持っていかないので、本書は現代社会に氾濫している「そんなに頑張らなくていい、肩の力を抜け、ありのままの自分を愛せ、ゆるふわ」といった趣旨の自己啓発本であり、この本と一緒に練炭を買えば必ず人生が楽になると保証する、とでも言っておく
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まあ確かに、「役に立つこと」は一切書いていないかもしれませんが(笑)、しかし本書は、現代社会を生きる上で重要なスタンスを教えてくれる作品でもあると思います。基本的には「面白いエッセイ」として読んで楽しめばいい作品ですが、著者の「勝利は敗北の始まり」という価値観に考えさせられることは多いかもしれません。
とりあえず、難しいことは考えずに、読んで爆笑すればいい本なんですけどね
メチャクチャ自虐的な人で、出てくるエピソードもなかなかぶっ飛んでるよね
勝つってことは負け始めるってこと?
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現代社会において「勝利」は「敗北」の始まりだ
と著者は書いています。「確かに」と感じる人も多いでしょう。著者がこの言葉をより具体的に説明している箇所を抜き出してみます。
日本人というのは、心の底から調子に乗ってる奴が嫌いであり、そういう人間がひとつボロを見せたばかりにハンバーグのタネになるまで叩かれる姿はもはやおなじみである。
たとえ勝ってもひたすら謙虚、オリンピックで金メダルを獲ったとしても、「すべて支えてくれた家族と応援してくれた皆様のおかげで、自分は屁をこいて寝てただけです!」みたいな態度を貫かなければいけないのである。せっかく血のにじむような努力をして勝利をつかんだのに、全然威張れない。ならば勝利の意味とはいったいなんであろうか。
つまり、成功や勝利など、すくわれる足が増えたに過ぎないのである。そういった意味では自分は完全に空中浮遊状態で、すくわれる余地はない
確かになぁ、と感じるのではないでしょうか。
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こんな話を思い出しました。時折、中東などの紛争地帯でジャーナリストが拘束されて、多額の身代金が要求される事態になります。お金を払ったかどうかはともかくとして、このジャーナリストが釈放され、自国に戻った際の反応が、日本と他の国では全然違うそうです。
日本では残念ながら、「自分の意思で危険地帯に足を踏み入れて捕まったんだから自己責任だ。迷惑を掛けやがってコノヤロー」というような、まさに非国民的な扱いになってしまうでしょう。しかし欧米では、「あなたは世界の現状を伝えようとしたヒーローだ。よく戻ってきてくれた」と歓迎されるのだそうです。
この話を知った時、日本は恥ずかしい国だな、と思いました
世界の現状を伝えようとしている人物を「非国民」扱いしたくはないよね
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著者が言う「心の底から調子に乗ってる奴」とはまた違う話なんですが、このように、本来的にはもっと称賛されてもいい人間が叩かれたりすることによっても、「調子に乗ってはいけない」という気分がより強まるでしょう。
だからこそ、「あえて負けてみせる技術」が必要なのだと説きます。
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日本人は偉業を成し遂げた者をすごいすごいと持ち上げるのは好きなのだが、「俺はすごい」と当人が言うのは大嫌いだという“真理”がある。それを当人が言ったが最後、今まで褒めていた者が一斉に「あんたなんか全然すごくないんだからね!」と叩く側に回るという1億総逆ツンデレ状態なのだ。そのような事態を避けるために、あえて「負けてみせる技術」は現代日本を生き抜くために必要だと思う
めんどくさいと感じますが、こういう世の中で生きているのは事実なので仕方ないでしょう。だからこそ、仮に勝ちを得たとしても、あたかも勝っていないかのような振る舞いを見せなければならないのです。
だったら「勝利」なんて要らなくない?
そうなると、誰だってこんな風に考えたくなるでしょう。そんな世の中で、「勝利」にどんな意味があるの? と。
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そこで著者の「負ける技術」が重要になってきます。
だが、実は私がより重要視している「負ける技術」とは、「俺は負け組です」と表明して他者にナメられるという術ではなく、「俺は負け組なんだ」と自分を納得させる処世術のことである。
100点が99点になる日におびえて暮らすよりは、「俺の人生良くて30点」と割りきってしまったほうが良い。絶望が一転希望に変わることはまれだが、希望が一瞬で絶望に変わることはままある。ならば最初から、「ちょっと絶望」ぐらいの位置にいたほうが気が楽ではないか
これはメチャクチャ理解できるなぁ、と感じました。
私は、どうせ後で落ちることが分かっているなら、低いところから落ちたいと思って、大学を中退したしね
階段を上って上って上った後で落ちると、メチャクチャ痛そう
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私はよく、「初対面の印象はちょっと悪いぐらいの方がいい」と主張しています。初対面で過剰に良く思われてしまうと、そこから減点方式で採点されてしまい、凄く疲れるからです。だったら、最初の時点では点数が低めだけど、それ以降なにかあった時に加点方式で評価される方がいいのではないか、と考えています。
どんなことであっても、瞬間的に良い場所まで上るのは、そんなに難しくないかもしれません。その一瞬だけにすべての力を注いでジャンプすれば、思っている以上の地点に到達できるかもしれません。しかし、その場所にいられるのは一瞬だけで、後は落ちていくばかりだとしても、その地点に到達したいと思うでしょうか?
私は嫌だなと思います。
だったら無理せず、あまり頑張らなくても維持できる場所よりもさらに少し下の地点にいる方が、日々穏やかに過ごせるのではないかと思うし、実際に私は、そういう意識で自分の人生の選択をするようにしています。
どうしても「お金を失う恐怖」に晒されそうで、穏やかに生きられる気がしないんだよなぁ
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あとは面白く読んでくれ
とまあここまで、割と真面目なテンションで本書を紹介してきましたが、そんな堅苦しい作品ではありません。なかなかに屈折した著者の様々な面白エピソード満載の作品で、そのバカバカしさに爽快さを感じてもらうようなそんなイメージでいいと思います。
コラムの連載を始めるにあたり、担当氏となにについて書くか話し合ったのだが、話し合えば合うほど、私には友達もいなければ趣味もなく、テレビや新聞をまったく見ないせいか話題のニュースも知らず、政治に関心がないのはもちろんのこと、抱かれたい芸能人の一人も思い浮かばないという、完全な生きる屍であることが判明するばかりであった
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そんな私も来世スベスベマンジュウガニに生まれ変わることと引き換えに、漫画家デビューさせてもらえることとなり、表現の場がネットから誌面へと変わった。しかし誰が読んでいるかさっぱり分からないという点だけは今も変わっていない
なにせ高校3年間で男子と喋った回数は、私の記憶ではわずか2回である。男女比がほぼ半々の学校にも拘らず下手をすれば厳しめの刑務所にいるよりも異性との接触回数が少ない気がする。しかもうち1回はおぼろげであり、もしかしたら私の妄想かもしれないのだ。はっきりしているあと1回のほうにしても、「窓開けて」と言われただけでよく考えたら会話ですらない
こんな感じのテンションで、「完全な生きる屍」たる著者の日常や過去の出来事、無駄な妄想などが満載の作品です。
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「砂糖と塩を間違えたから食べられなくなったケーキを再利用するために一人パイ投げをする」って話は爆笑だった
人生を「リア充」として生きてきた人には、共感ポイントゼロの作品かもしれませんが、「非リア充」として生きてきた人には共感しかない作品でしょう。そして、友だちもいないしテレビも見ないのに、よくもまあこれだけ書くことが(しかも面白い)あるものだと感心させられます。
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著:カレー沢薫
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最後に
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