目次
はじめに
この記事で取り上げる本
著:ベン・ライター, 著:桑田 健
¥1,456 (2021/06/16 07:04時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この本をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 「アストロズが優勝する」という予言に、地元もブーイングするほど弱かったチーム
- 『マネーボール』のようなデータ至上主義では勝てない
- 「直感」や「運」といった”不正確”なデータをいかにシステムに取り込むか?
私は野球にはまったく興味ありませんが、本書はそんな人間でも興味深く読める一冊です
自己紹介記事
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まずはこんな話から始めよう。著者が「2017年、アストロズがワールドシリーズの覇者となる」と予言した話だ。
『スポーツ・イラストレイテッド』という、アメリカで非常に有名なスポーツ雑誌がある。定期購読者も含めれば300万人もの読者がいる。この2014年6月30日号の表紙に、「2017年のワールドシリーズ覇者」というタイトルをつけて、アストロズの外野手であるジョージ・スプリンガーを起用したのが、本書の著者なのだ。
しかしこの号は、アストロズの地元も含め、大ブーイングを巻き起こす。それもそのはずだ。何故なら2014年の時点でアストロズという球団は、
その半世紀で最悪の野球チームだった
という状態だったからだ。それでも著者は、「何故負けているのか分からない」と考え、編集長を説き伏せて、このありえない起用を行った。
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そして、まさに著者の予言通り、2017年にアストロズはワールドシリーズの覇者となる。
サイ・ヤング賞を受賞したカイケルは元々、パッとしない投手だった
もう一つ、印象的なエピソードを先に挙げておこう。
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本書に登場するデータ分析家は、非常に優秀である。それは「データを分析する能力に長けている」という意味でももちろんなのだが、それ以上に、「データを過信しない」という部分においてさらに強調される。
カイケルという投手は、球団の立て直しのためにデータ分析家が関わる以前からアストロズに所属していた。球速は140キロ台、これといった球種はなく、常に名前を呼び間違えられるような、実にパッとしない選手だった。カイケルはトレードに出されそうになったが、「誰もほしがらなかった」というだけの理由でアストロズに残っていたのだ。
しかし、そんなカイケルは、2015年のサイ・ヤング賞を受賞した。その年最高の投手に与えられる賞だ。なぜこんな激変が起こったのか?
アストロズに関わることになったデータ分析家は、「良い人材をスカウトする」ためのシステム開発に取り組んでいた。様々なデータを入力することで、チームに必要な人材を見極め獲得するためだ。そして同じシステムは当然、既に球団に所属している選手に対しても使える。チームの選手の方がデータも取りやすいので、より正確な分析が可能だ。
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チームの選手のデータを分析した結果、データ分析家たちは「守備シフト」を提案する。私は野球に詳しくないが、この「守備シフト」、今ではあらゆる野球チームが採用している手法である。それを、アストロズのデータ分析家たちが最初に提案したのだという。
これは、対戦相手の選手がどの方向に打球を飛ばすのかなどのデータから、打者ごとに守備位置を大きく変える、というやり方だ。カイケルは当初、この「守備シフト」に反対したが、実のところこの「守備シフト」に救われたのだ。球速はなかったが、異様なほどコントロールの精度が高い投手だったので、「コントロール」と「守備シフト」の組み合わせのお陰で、カイケルはサイ・ヤング賞を受賞できたのである。
本書はこんな風に、メジャーリーグで偉業を成し遂げた「野球のド素人」たちの奮闘の物語である。
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本書『アストロボール』の指摘は決して、「野球」の話に留まらない
先に書いておこう。本書は決して「野球」の話に留まるものではない。私自身、野球にはまったく興味がなく、ルールを知っている程度の人間だ。以前、当時巨人の選手だった「長野」を「ながの」と読んで間違いを指摘されたこともある。
この作品は、今後世の中を大きく激変させていくだろう「ビッグデータ」の物語である。そして本書からは、「ビッグデータだけでは不十分」という重要な認識を得ることができる。
アストロズがコンピューターだけで球団運営を行っていたら、プエルトリコ出身の高校生のショートをドラフトで指名しなかっただろうし、身長168センチの二塁手を入団させなかっただろうし、四十歳のフリーエージェントの選手と契約しなかっただろうし、年俸200万ドルを支払わなければならない三十代半ばの投手をトレードで獲得しなかっただろう
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この作品の非常に興味深い点は、「ビッグデータには、人間の直感を組み込む必要がある」という指摘である。データだけ分析していても、本質は見えない。当たり前だと思われるかもしれないが、そういう意識の人も多くいるのではないだろうか。ビッグデータさえ分析すれば、なんでもわかる、と。
あるいは、ビッグデータだけでは不十分だと理解している人でも、じゃあどうすればいいのかまでは分からないという人も多くいるだろう。
この点で本書は、『マネーボール』と一線を画する。
著:マイケル ルイス, 著:中山 宥
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ポチップ
出演:Brad Pitt, 出演:Jonah Hill, 出演:Philip Seymour Hoffman, 出演:Robin Wright, 監督:Bennett Miller, プロデュース:Michael De Luca, プロデュース:Rachael Horovitz, プロデュース:Brad Pitt, プロデュース:Michael DeLuca
¥299 (2021/06/16 07:11時点 | Amazon調べ)
ポチップ
ブラッド・ピット主演の映画の方がよく知られているかもしれないが、この作品は、アスレチックスというメジャーリーグの弱小球団を、同じようにデータ分析で躍進させた実話が元になっている。しかし『アストロボール』では、
『マネー・ボール』では、スカウトたちは主に抵抗勢力として描かれており、進展の前に立ちはだかる間抜けで時代遅れな人間だと扱われていた
と書かれている。「データ分析は凄いのに、スカウトはぜんぜん理解しない」というスタンスで描かれているということだ。
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『マネーボール』は、「ビッグデータ」などという単語が世に知られていない頃の話だろうし、そういう時代においては、「スカウトは敵」という分かりやすい構図を作らなければ戦えなかった、という背景もあったかもしれない。しかしそうだとしても、「データ至上主義」に偏っていたことは間違いないと思う。
「いかにして直感をデータに組み込むか」という難しい問題
二人は自分たちがほかの誰よりも上手な球団運営の方法を心得ているという考えは抱くまいとした
自分たちは賢いという感情は自分たちの敵でもある。私たちはそれを何としてでも避けようとしている
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「誰かから未来がどうなるかわかると聞かされた時には、その相手を信じてはいけない」シグは言う。「未来は私たちが想像するよりもはるかに不可解だ。私たちの想像が及ぶよりもはるかに不可解なんだよ。未来を解明できたと思ったとしても、少し待ってごらん。たぶん間違っているから」
本書には、このような文章がたくさん出てくる。
データは非常に客観的なもので、嘘をつかない。だからこそ、それらの分析から分かることは多いだろう。しかし本書のデータ分析家たちは、自分たちが野球のド素人であることもきちんと理解していた。野球好きではあるが、経験者ではない。どれだけデータの分析ができたところで、それだけで上手くいくはずがないと分かっていたのだ。
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だからこそ彼らは、「直感」や「運」としか呼べないようなものも、データ化して取り込もうとした。
変数の中にはスカウトたちの直感に基づくものもあり、直感はスピードガンの数字や長打率と比べると一貫性に欠けているものの、価値としては等しい。いや、より価値があると言えるかもしれない。なぜなら、スピードガンの数字の読み方ならば、ほかの全球団も知っているからだ
この「スピードガンの数字の読み方ならば、ほかの全球団も知っている」という表現は、非常に重要だと感じる。というのも、アストロズの成功によって、データ分析によって球団を運営しようとする動きが加速したからだ。
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機械や設備を増やせば、データはいくらでも”正確”に得ることができる。だから、その点では差別化できない。むしろ重要になってくるのは、”不正確”にしか得られないデータにどのような重みをつけてシステムに取り込むか、という経験則の方だ。アストロズでは、「投球フォーム」や「スイングの軌道」は当然のこと、「選手の性格」や「家族の経歴」まで変数としてシステムに入力したという。
本書はまさに、この辺りの”不正確”なデータの扱いが非常に面白い。もちろん、その詳細にまで詳しく触れているわけではないが、「ビッグデータ」を「分析する」という作業からイメージされる無味乾燥さとは、少しかけ離れた情景が思い浮かぶことは間違いないだろう。
「チームの和」という数値化が難しい情報をデータ化する
さらに彼らは、「選手個々の能力」に限らず、「チームの和」という、どうデータ化すればいいのか分からないようなものまで捉えようとしていた。
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この点に関しては、カルロス・ベルトランという選手に関するエピソードが非常に印象的だった。
目には見えない形で、しかもしばしば分類できない形で、チームを後押ししてくれるベルトランの力に1,600万ドルの年俸を支払っていることについて、球団はまったく後悔していなかったが、グラウンド上での成績はその数字に見合うものとは言えなかった
第七戦にまでもつれ込んだこのシリーズで、ベルトランは十二回打席に立ち、ヒットは一本しか打てなかった。しかし、もし彼がいなかったら、アストロズはALCSを勝ち抜けなかっただろう
これらの引用から分かるように、彼は、野球選手としてグラウンドで結果を残しているわけではない。それでも、1,600万ドルの年俸を払う価値があると球団が考えていたのは、まさに「チームの和」という観点からだ。「彼がいることで、チームのまとまりが良くなっているはずだ」という感覚が彼らの中にあり、その「直感」を優先しているのだ。
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しかし同時に、本書ではこうも書かれている。
だが、ベルトランはワールドシリーズでヒットを一本も打てなかったものの、もし彼がいなかったらアストロズは頂点に立てなかっただろうということを予測する方法は、今のところ存在しない
データ分析家たちは結局、「ベルトランがいることで『チームの和』が良い状態になっている」ということを示せなかった。もしかしたら、彼がいなくてもアストロズは頂点に立っていたかもしれない。それは分からない。大体の状況において、2つ以上の選択肢を同時に選ぶことはできない。結局、最終的には「誰か」が決断を下さなければならないのだ。
「ビッグデータ」をどう活用するかは、世界中で様々なチャレンジが行われているはずだ。その一つの視点として、本書で描かれる「ビッグデータに直感を組み込む」という発想は、非常に興味を掻き立てるものではないかと思う。
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「最低のチーム」だったお陰で実現できた大改革
さて、本書に登場するデータ分析家たちは、野球のド素人だと書いた。そこで、こんな疑問が出てこないだろうか? そんなド素人の意見を、どうして受け入れたのか、と。
その要因の一つとして、アストロズというチームがあまりに最低最悪だったことが挙げられる。冒頭でも書いた通りアストロズは、「その半世紀で最悪の野球チーム」だった。そしてだからこそ、「ド素人の発想にでも頼らなければもうどうにもならない」という破れかぶれの挑戦ができたと言える。
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自力ではどうにもならないほど最低だった野球チームと、野球は好きだが経験はないデータ分析家がタッグを組んだことで、奇跡的な環境が生まれたというわけだ。かなり短期間で成果が出たこともあり、
おそらく何よりも重要なのは、未来を予測し、同時に変えていくための新しい方法をこれからも積極的に受け入れようという、球団としての意識が定着していることだろう
というように、チーム全体の意識改革にも成功している。そして、データ分析家がフルスイングで自らの力を試すことができたお陰で、「ビッグデータに直感を組み込む」などという、普通には実現しなさそうな対策を実行に移せたのである。
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アストロズのプラスの結果は、成功とは「人間か、それとも機械か」の問題ではなく、「人間+機械」の問題だということを示すものとなりうる
「ビッグデータ」と向き合わざるを得ないこれからの我々にとって、これは大きな社会実験だと言えるだろう。
一方、アストロズに関しては残念な話もある。実は、ワールドシリーズを制覇した2017年に、電子機器を使って相手チームの捕手のサインを盗み打者に伝えていたと告発されたのだ。本書の訳者はあとがきで、
不正行為があったと知ってから読むと、本書の内容の一部の信憑性に疑問が出てくることは否めない
と書いており、まあ確かにその通りだなと感じさせられる。しかし、本書でメインで描かれる者たちが関わっていたわけではなさそうだし、アストロズが成した偉業が、この一件ですべてゼロ評価になってしまうのは違うようにも感じる。
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著:ベン・ライター, 著:桑田 健
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最後に
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【評価】映画『シン・ゴジラ』は、「もしゴジラが実際に現れたら」という”現実”を徹底的にリアルに描く
ゴジラ作品にも特撮映画にもほとんど触れてこなかったが、庵野秀明作品というだけで観に行った『シン・ゴジラ』はとんでもなく面白かった。「ゴジラ」の存在以外のありとあらゆるものを圧倒的なリアリティで描き出す。「本当にゴジラがいたらどうなるのか?」という”現実”の描写がとにかく素晴らしかった
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現在では、人工知能を始め、我々の生活を便利にする様々なものに使われている「ベイズ推定」だが、その基本となるアイデアが生まれてから200年近く、科学の世界では毛嫌いされてきた。『異端の統計学ベイズ』は、そんな「ベイズ推定」の歴史を紐解く大興奮の1冊だ
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「生理は語ることすらタブー」という、21世紀とは思えない偏見が残るインドで、灰や汚れた布を使って経血を処理する妻のために「安価な生理用ナプキン」の開発に挑んだ実在の人物をモデルにした映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』から、「どう生きたいか」を考える
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「独学の達人」「博覧強記の読書家」などと評される読書猿氏が、古今東西さまざまな「発想法」を1冊にまとめた『アイデア大全』は、ただのHow To本ではない。「発想法」を学問として捉え、誕生した経緯やその背景なども深堀りする、「人文書」としての一面も持つ作品だ
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