目次
はじめに
この記事で取り上げる本
著:大栗 博司
¥968 (2021/10/18 06:12時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この本をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 「ヒッグス粒子」の発見によって「標準模型」が完成し、「弱い力」の謎が解き明かされた
- 「弱い力」の謎の解明には、天才・南部陽一郎の「自発的対称性の破れ」が背景にある
- 「科学研究の価値」はどう判断されるべきか?
本書のお陰で、南部陽一郎と、彼が生み出した「自発的対称性の破れ」がいかに凄いのかを理解できた
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「強い力」「弱い力」を支配する「対称性」と、「ヒッグス粒子」によって解き明かされた「弱い力」の謎を『強い力と弱い力』から知る
本書『強い力と弱い力』とこの記事の構成について
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本書のタイトルには「強い力」「弱い力」「ヒッグス粒子」などのキーワードが含まれているが、これらはすべて、素粒子物理学における「標準模型」と呼ばれる理論に関係している。そして本書は、基礎的な知識を持たない人にもできるだけ分かりやすく「標準模型」を伝えようとする良書だと私は思う。
しかしだからと言って、易しい本というわけではない。何故なら「標準模型」そのものが非常に難解だからだ。文系の人でも頑張れば読めると思うが、簡単ではない。
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「標準模型」は日本人を含む多数の科学者による長年の奮闘によって作られてきたわけだが、その過程で「強い力」「弱い力」という、それまであまり詳しく知られていなかった謎の力についての理解も進んでいくことになる。
そしてさらに「ヒッグス粒子」が発見されたことで、「標準模型はやはり正しかった」と確定することになったのだ。後でも触れるが、「ヒッグス粒子の発見」は「標準模型の完成」という意味でも非常に重要な出来事なのである。
さてこの記事では、「標準模型」そのものの説明はしない。図などを駆使しないと説明が困難であり、また、「標準模型」の全体像を知りたければやはり本書を通読するのが一番良いと思うからだ。
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この記事では、タイトルにある「強い力」「弱い力」「ヒッグス粒子」が、「標準模型」の完成にどのように関係することになったのかというざっくりとした流れを書こうと思う。それによって、本書への興味を抱いてくれれば幸いだ。
「ヒッグス粒子発見」の驚きと誤解
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著者はヒッグス粒子の発見に対して、こんな感想を書いている。
ヒッグス粒子発見の宣言を聞いて、「自然界は本当に標準模型を採用していたのだ」という驚きと感動をかみ締めました
先ほど書いたように、「ヒッグス粒子」が発見されたことで「標準模型」が完成した。そう考えると、「科学者が予想していた通りだった」わけで、「驚き」や「感動」という感覚が理解できないという方もいるだろう。
著者は以下のようにも書いていて、これを読めば少しは状況が理解できるかもしれない。
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私が感動したもう一つの理由は、ヒッグス粒子の発見は、技術の勝利であるとともに、数学の力でもあったということです。
この粒子の存在は、素粒子の世界を数学的に説明するために、理論物理学者たちが紙と鉛筆で考え出したものです。「こういう素粒子があれば理論的に辻褄が合う」という形で予言したものですから、本当にそんなものが存在するかはわかりませんでした(中略)
ところが今回の発見で、自然界がその理論を採用していたことがわかりました。人間が頭の中で考え出したことが、自然の基本的なところで実際に起きていたのです
科学の歴史においては度々あるが、「そんな風になっているとはとても信じられないが、こうとしか考えられない」というような予想が生まれることがある。そして「標準模型」も、まさにそのような理論だということだろう。人間の思考力によって、「自然がこうなっててくれないと辻褄が合わない」という理由で考え出された仮説が、実際にその通りであることが示されたというわけだ。
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「標準模型」がどれほど異端的な理論なのかを簡単に説明することはできないが、後で触れる「弱い力」の説明だけでも、充分その特異さを理解できるのではないかと思う。そしてそんなおかしな方式を自然が採用していたことが分かったのだから、それは驚きに繋がるだろう。
さて、「ヒッグス粒子」が発見された際、報道などではよく「ヒッグス粒子によって物質の質量の起源を説明できる」と紹介されていた。私も、テレビなどでそのような紹介のされ方をするのを目にしたことがあるが、本書では、その理解はほぼ誤りだと指摘されている。
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実際には、物質の質量の99%は「強い力」が生み出しており、「ヒッグス粒子(ヒッグス場)」は残りの1%にしか関係していないという。確かにこう説明されると、「ヒッグス粒子が質量の起源を説明する」という紹介は誤りだと感じるだろう。テレビなどマスメディアでは、科学のネタを短い時間の中で正確に伝えることは困難だろうが、マスメディアの情報をそのまま受け取るのはマズいようである。
「ヒッグス粒子」の発見によって、「弱い力」の謎が解き明かされた
「強い力」「弱い力」については後ほど説明するが、まずは「ヒッグス粒子」の発見がどのように「標準模型」の完成に役立ったのかについてもう少し触れていこう。
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まずは「ヒッグス粒子」が「標準模型」によってその存在を予測されていた最後の粒子だったということが挙げられる。つまり、「標準模型」が予測していた「ヒッグス粒子」がきちんと発見されたことで「標準模型」に必要なピースがすべて揃い、正しいことが判明したというわけだ。
では何故「ヒッグス粒子」などという粒子の存在が予測されたのかと言えば、それは「弱い力」を説明するためだ。「弱い力」というのはかなり謎めいた存在で、普通のやり方ではなかなか上手く現象として説明できなかった。そこで、「ヒッグス粒子(ヒッグス場)」というものがあると仮定してみたらどうだろうか、というアイデアが生まれたのだ。
もともと「ヒッグス粒子(ヒッグス場)」は、「強い力」を説明するためにその存在が仮定されたという。この記事ではその辺りのことには詳しく触れないが、やがてそれは「弱い力」を説明するための機構として流用されることになる。そして、もし「ヒッグス粒子(ヒッグス場)」が存在するなら、「弱い力」が抱えている3つの難問を一気に解決できる、というモデルが作られたのだ。
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しかし一方で、「ヒッグス粒子(ヒッグス場)」の存在を仮定せずに「弱い力」を説明しようと試みる「テクニカラー理論」と呼ばれるアイデアも存在した。つまり、「ヒッグス粒子が存在するか否か」が確定しないと、どちらの理論が正しいのか分からないというわけである。
そして「ヒッグス粒子(ヒッグス場)」が発見されたことで、「ヒッグス粒子(ヒッグス場)を使った弱い力の説明の方が正しい」と確定したということになるわけだ。
では、「ヒッグス粒子(ヒッグス場)」はどのようにして「弱い力」の謎を解明したのだろうか。詳しいことは後述するが、ここでは「自発的対称性の破れ」という単語だけ出しておこう。つまり、「『自発的対称性の破れ』という現象が起こるなら、弱い力の謎は解ける」ことが分かっており、「その自発的対称性の破れを引き起こす仕組みとしてヒッグス粒子(ヒッグス場)が想定された」というわけである。
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ではまず、「強い力」「弱い力」とは何か、という説明をしていこう。
「強い力」「弱い力」の説明と「対称性」について
「強い力」「弱い力」というのは、物理学の用語としては実に奇妙に感じられるネーミングだが、どちらも正式名称である。自然界には4つの力が存在しているとされ、その内の2つが「強い力」「弱い力」なのだ。他の2つである「重力」「電磁気力」はかなり早い段階で科学者がその存在に気づいたが、「強い力」「弱い力」は粒子同士に働く力であり、素粒子物理学が発展するまではその存在すら正しく認識されていなかった。
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現在では、「重力」「電磁気力」「強い力」「弱い力」の4つの力を統一することが物理学の聖杯と考えられている。どういうことかと言うと、「現在は異なる4つの力に分離しているが、ビッグバン直後はこの4つの力は同じ1つの力だったのではないか」という仮説があり、その正しさを示すために4つの力を統一しようとしているのだ。
この「力の統一」という発想に最初に踏み出したのはアインシュタインだが、アインシュタインは「重力」と「電磁気力」の統一に終生こだわった。というのも、アインシュタインの時代にはまだ「強い力」「弱い力」の重要性が正しく理解されていなかったからだ。もしアインシュタインが、この4つが自然界の基本の力なのだ理解していたら、4つの力の統一を目指していたことだろう。
ちなみに、「強い」「弱い」というのは、「電磁気力より強い/弱い」という意味である。
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さてそれでは、それぞれの力についてざっと説明しよう。
「強い力」は、「クォーク同士を結びつける力」である。「クォーク」というのは、原子よりも小さな、現時点で物質の最小構成要素とされているものだ。「原子」は「3つのクォーク」によって構成されていると考えられており、その「3つのクォーク」同士を繋ぎ止める力が「強い力」というわけである。
一方「弱い力」は、「ある粒子を別の粒子に変える力」だ。これはなかなかイメージが難しい。「重力」「電磁気力」「強い力」は、「力」と言われた時にイメージするような働き(「引っ張る」とか「くっつける」など)をするが、「弱い力」だけはそういう類のものではないからだ。具体的に書くと、「中性子」という粒子は「弱い力」の働きによって、「電子」と「ニュートリノ」を放出しながら「陽子」に変化するのである。
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どちらも非常にミクロな世界で働く力であり、素粒子に関する知見が深まらなければ発見できない力だったと言える。そしてどちらとも、発見された当時は謎だらけで、どうしてそんな力が生まれるのか理論的な説明を誰も行えなかったそうだ。
しかし、「ヤン―ミルズ理論」という場の量子論と呼ばれる考え方が出てきたことで突破口が開かれることになる。私には「ヤン―ミルズ理論」が何なのか説明はできないが、とにかく場の量子論というそれまでにはなかった発想によって「強い力」「弱い力」の謎が少しずつ解明していくことになるのである。
しかしここで1つ、大きな問題に直面することになる。ポイントになるのは「対称性」だ。
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「ヤン―ミルズ理論」というのは、「対称性のあるものを入れ替える理論」である。そして「対称性」とは「変換しても変わらない性質」のことを指す。
例えば、「円」という図形は、どれだけ「回転という変換」を繰り返しても変化しない。このような場合に、「円は回転対称性を持つ」と言う。小学校の算数でも「線対称」「点対称」など習うだろうが、図形に関して言えばまさにそのような話だ。そして物理学における「対称性」というのは、図形に限らず、もっと様々な性質にも適用できる、というわけである。
「ヤン―ミルズ理論」は「対称性のあるものを入れ替える理論」なのだから、「対称性が保たれている対象」にしか使うことができない。そして「強い力」は「対称性」が保たれているので、問題なく「ヤン―ミルズ理論」を適用することができた。
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しかし「弱い力」は、「対称性」が保たれない。つまり、普通に考えれば「ヤン―ミルズ理論」を適用することができず、そうなると「弱い力」を理論的に説明することは不可能ということになる。これが非常に大きな問題と認識されていたのだ。
この難問を解消するきっかけを生み出したのが、天才科学者として知られる南部陽一郎が考え出した「自発的対称性の破れ」である。
彼はこんな風に考えた。「弱い力」は、現実には「対称性」を持たないが、理論上は「対称性」が保たれているのではないか、と。そして、「自発的」に「対称性」が破れるような仕組みが存在すれば問題は解決するのではないか、と主張した。
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つまりこういうことだ。私たちが「弱い力」を捉える際には「対称性」を持たないものとして観察されるが、それは「自発的」に破れているだけであり、理論上は「対称性」が成り立っている。そして理論上「対称性」が成り立っているのなら「ヤン―ミルズ理論」が使え、「弱い力」の説明が可能なのではないか、というわけだ。
そして南部陽一郎の「自発的対称性の破れ」というアイデアを受けて、「ヒッグス粒子(ヒッグス場)の存在を仮定すれば、『自発的対称性の破れ』が引き起こされるかもしれない」という発想が生まれたのである。
「ヒッグス粒子」というのは提唱者であるヒッグスの名前から取られているのだが、実は同じアイデアをほぼ同時期に考えたグループが他に2つ存在したという。科学の世界ではこのようなことはよく起こるが、「ヒッグス粒子の発見」によってその全員がノーベル賞受賞とはならなかった(ここには、ノーベル賞に関する様々な規定が関係しており、様々なドラマが存在する)。
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つまり、「ヒッグス粒子」の誕生は南部陽一郎の天才的なひらめきあってのものと言っていいなのだが、
2004年に強い力の「漸近的自由性の発見」でグロス、ウィエウチェック、ポリッツァーの三人がノーベル賞を受賞した際、スウェーデン王立科学アカデミーの公式発表には「南部の理論は正しかったが、時代を先取りしすぎた」との異例の言及がありました
というように、あまりに独創的な発想から成る南部陽一郎の様々な理論は受け入れられるまでに時間が掛かった。ちなみに南部陽一郎は、2008年にようやくノーベル賞を受賞している。
「自発的対称性の破れ」とは何か?
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「自発的対称性の破れ」が何なのかを上手く説明するのはなかなか難しいので、本書から2つ引用しよう。
鉛筆を尖った方を下にして机の上に立てようとしてみてください。どんなにがんばって釣り合いを取ろうとしても、結局はどちらかの方向に倒れてしまうはずです。鉛筆が倒れる前の状態には特別な方向はないように見えます。最初は回転対称だったはずなのに、倒れてしまった後には鉛筆の向いている方向が決まるので、対称性が破れてしまうのです。あなたが意図して鉛筆が倒れる方向を選んだわけではないのに結果的に対称性が破れてしまうので、「自発的対称性の破れ」と呼びます
南部はノーベル賞の受賞記念講演で、対称性の自発的破れを、次のようなたとえで説明しています。
広い体育館の中にたくさんの人々が並んで立っていると思ってください。この体育館は完全な円形で、壁には時計もなければバスケットボールのゴールやステージもありません。したがって、どちらを見ても風景は同じ。つまり回転対称の状態です。
特別な方向がないので、そこに立っている人々はどちらを向いてもよさそうです。ところが彼らは付和雷同しやすい性格で、周りの人たちと同じ方向を向きたがる。最初はバラバラの方向を見ているのですが、その中の何人かがある方向を向くと、周囲もそれにつられて同じ方向を向くようになります。その結果、体育館そのものは回転対称なのに、そこにいる人々がすべて同じ方向を向く。回転対称性が自発的に破れているのです
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なんとなくイメージは伝わるだろうか。どちらも、「元々は『回転対称』という対称性を持っている」「しかし、結果として”自発的に”対称性が破れてしまう」ということが説明されている。「弱い力」もこれと同じで、結果として「対称性」は破れているのだが、元々は「対称性」を保持しているので、「ヤン―ミルズ理論」を適用しても問題はない、と考えるというわけだ。
この考え方は、
専門の物理学者でさえその意義を理解するのに何年もかかった理論
と書かれているほどあまりに独創的であり、浸透するのに長い時間を要することになる。しかもこの「自発的対称性の破れ」は、「弱い力」だけではなく、物理学の様々な分野に関わる発見だということが徐々に理解されるのだ。著者は、そんな発想にたどり着いた南部陽一郎について、「偉大な理論物理学者には、賢者、曲芸師、魔法使いの三種類のスタイルがある」という話に続けてこう書いている。
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そして、ごく稀に魔法使いとしか考えられない研究者が現れます。彼らの仕事は、時代を超越しているので、並の研究者にはすぐに理解できません。論文を読んでも、どうしてそのようなことを思いついたのか、なぜそうなっているのか、見当がつきません。しかし、彼らはこれまで誰も見たことのない自然界の深い真実を指し示しているのです。
南部は二十世紀を代表する魔法使いと言えるでしょう
私自身には「自発的対称性の破れ」という考え方の凄さを実感できるほど科学的な知識はないのだが、これほど絶賛されると、いかに南部陽一郎が凄かったのかが理解できるだろうと思う。
ここまでの話のまとめ
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それでは、ここまで出てきた内容をざっとまとめておこう。
まず科学者は、「強い力」と「弱い力」という、それまで知られていなかった未知の力を発見する。既に知られていた「重力」「電磁気力」を合わせて、自然界には4つの力が存在すると分かったが、「強い力」「弱い力」がどのように生まれるのか、その理論的な説明をすることはかなり困難だった。
しかしその後、「ヤン―ミルズ理論」が登場したことで突破口が開ける。「ヤン-ミルズ理論」は「対称性」に関する理論であり、「対称性」が成り立っている「強い力」についてはそのまま適用することができた。しかし「弱い力」は「対称性」が保たれない。「弱い力」が「対称性」を持たないせいで3つの難問が現れてしまったが、もし「弱い力」にも「対称性」が成り立つなら、「ヤン―ミルズ理論」を適用して3つの難問を解消できることになる。
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そこで南部陽一郎が生み出したのが「自発的対称性の破れ」という考え方だ。これは「本来は対称性が存在しているのだが、何らかの理由によって自発的に対称性が破れてしまう」という見方であり、もしこれが成り立つのであれば、「弱い力」に「ヤン―ミルズ理論」を適用することが可能となる。
その後ヒッグスら複数の理論家が、「『ヒッグス粒子(ヒッグス場)』の存在を仮定して『自発的対称性の破れ』を説明する」モデルを構築する。これが正しければ「弱い力」の謎も解決である。そして実験家の奮闘により「ヒッグス粒子」は無事発見され、「標準模型」の完成に至った。
という流れになる。
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「標準模型」に関しては、ノーベル賞受賞者だけでも40人以上が関わっている。日本人の小林誠・益川敏英も、クォークが3種類しか発見されていない段階で「クォークは6種類存在するはずだ」という仮説を提唱しノーベル賞を受賞するに至った。素粒子物理学の世界では、現時点で最高峰と呼べるモデルである。
「研究の価値」をどう判断するか?
さて本書には、「研究の価値」をどう判断するかという話も展開される。
素粒子物理学の実験というのは、莫大なお金を掛けて建設された「加速器」という巨大な実験施設で行われる。そしてそんな大金の掛かる研究に対して、「どんな役に立つのか?」と問われることもあるという。
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この疑問は、科学全般の問題に関わると言ってもいい。なぜなら現在は以前と比べて格段に、「すぐに価値を生む研究」にしか予算がつかなくなっているからだ。
日本人科学者が多数ノーベル賞を受賞しているが、それらの研究の中には「研究成果が発表された時点では、何の役に立つのか分からなかったもの」も多くある。以前はそのような基礎研究にも予算の振り分けがなされていたが、徐々に、実用的で価値の分かりやすい研究でなければ予算獲得が難しくなっているという。だからこそ「この研究はどんな役に立つのか?」を説明できなければならないのだ。
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しかしそれではマズいということを、著者は「電気」を例にして説明している。
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本書で紹介されている例ではないのだが、現在スマートフォンなどに使われているリチウム電池も同じように、開発された当初は「何に使えばいいかさっぱり分からない代物」だったそうだ。
つまり、発見・発明された当初には利用法が分からないものが、その後の未来で大活躍する可能性は充分にある、ということだ。「分かりやすく役に立つ研究」だけをしていたら、社会を変える発見・発明は尻窄みになってしまうかもしれない。だからこそ、基礎研究にも力を入れることが重要なのだ。
そう考えれば、「そんな研究をして何の役に立つのか?」と科学者自身が答えられないとしても何の問題もない。発見・発明した人間が利用法まで考えなければならない理由はないというわけだ。
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役に立つ研究は分かりやすいし、だからこそ支持を集めやすい。しかし私たちの生活は実は、過去に誰かが生み出した「用途不明の発見・発見」によっても支えられているのだ。そのことを常に頭の片隅において、科学研究を評価しなければならないというわけである。
科学研究というのは「何が発見されるか分からない」からこそ価値がある。だからこそ、科学研究の恩恵を受ける側が、正しい理解で科学研究の価値を捉える必要があるのだ。
また本書には、お金の話も載っていて興味深い。
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ちなみに、2020東京オリンピック・パラリンピックでは、最終的に3兆円まで予算が膨らんだとのこと。それだけあれば、LHCを7.5台も建設できると考えると、言うほど高くないと感じられるかもしれない。
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