目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
「プラスチックの海」HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 海鳥の胃に、体重の15%もの重量のプラスチックが詰め込まれている
- SDGsは正しい知見・知識に基づかなければ逆効果
- プラスチックは、我々人間の身体にも入り込んでいる
この現実に対処するためには、我々は、一定の不便さを受け入れなければならないだろう
自己紹介記事
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内容の紹介をする前にまず、この映画の中で最も衝撃的だった場面について触れよう。
死んだ海鳥の胃を切り開く場面がある。なんのためにそんなことをするのか? それは、胃の中にどれぐらい「プラスチック」があるかを確かめるためだ。海に流れ着くプラスチックは、様々な形で海鳥の胃に収まってしまう。
結果はどうだったのか。映画に出てくる海鳥の胃からは、276個ものプラスチックが発見された。その重さは、海鳥自身の体重の15%にも相当したという。これは、体重60kgの人間の胃に9kgものプラスチックが入っているのと同じことだ。
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相当に衝撃的な結果だ。
この「体重の15%に相当するプラスチック」が、「過去発見された最大」なのか「見つかる平均」なのかは映画からは分からない。おそらく前者だとは思うが、平均がもっと低い数値なのだとしても無視できる問題ではない。
当然、我々人間が地球に存在していなければ、こんな問題は起こらなかった。そういう意味でももちろんプラスチックごみは「人間の問題」なのだが、人間もこの海鳥と同じようにプラスチックを摂取してしまっている、という意味でも「人間の問題」なのだ。
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SDGsに対する私のスタンス
SDGsへの意識は、特に若い世代ほど高いと言われ、その流れは世界中を大きく変えようとしている。否応なしに「未来への負債」を抱えざるを得ない現役世代が、「自分ごと」として環境問題などに取り組んでいる姿は素晴らしいし、どんどん広まってほしいと思う。
ただし一点、注意しなければならないと考えていることがある。SGDsだけに限る話ではないが、「正しい知見・知識に基づいて行動しなければならない」ということだ。
例えばかなり以前だが、「森林を守るために割り箸を使うのを止めよう」という動きが起こったことがある。恐らく、現在そのような主張は廃れているはずだ。
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確かに漠然としたイメージだけで考えると、「木を使っているのに使い捨てなんてもったいない」ということになるだろう。しかし実際には、それは捉え方を間違えている。少なくとも、”国産”の割り箸には当てはまらない。
何故なら、国産の割り箸は「間伐材(や端材)」を使って作られているからだ。
「間伐材」とは、森林を守るために伐採される木のことである。木というのは密集しすぎると日光が当たらず暗くなり、森林全体が荒廃してしまう。だから森林を長く残すために、適切に木を間引かなければならない。その際に切られる木が「間伐材」である。そして、この間伐材を有効活用するアイデア商品として、「割り箸」が作られるようになったのだ。
「間伐材を使った割り箸」が使われることで、それまでは捨てるだけだった「間伐材」を売ることができる。「間伐材」が売れるということは、「間伐」に人手を掛けられるということであり、それによって森林が守られるのだ。逆に、「間伐材を使った割り箸」が使われないことで「間伐材」が売れなくなれば、「間伐」という行為はただのコストでしかなくなり、資金力のない業者ほど森林を守るための「間伐」を行えなくなってしまうことになるだろう。
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つまり、「森林のために(国産)割り箸を使わないようにしよう」という動きが、実は森林の荒廃を早めてしまっていることになるというわけだ。
こういう状況は案外多くある。良かれと思ってやったことが逆効果だと明らかになることは決して珍しいことではない。
そして、SDGsや環境問題についても、同じような勘違いによって行動が促されてしまいうる。特に、若い世代の関心が高いということは、SNSによる情報発信の影響が大きくなるわけだが、残念ながらSNSにはデマも多く存在する。そんなデマに踊らされて、結果的に悪影響になってしまうような行動を取る可能性も否定できない。
だからこそ、「正しい知見・知識」に基づいて行動しなければならないのだ。
そういう意味で、「世界の現状」をありのままに伝えてくれる『プラスチックの海』の存在は、非常に重要だと言える。
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監督は元々、クジラを撮影するつもりだった
この映画はタイトルの通り、プラスチックごみが海に与える影響について警鐘を鳴らす作品だ。しかし監督のクレイブ・リーソンは元々、プラスチックに問題意識を持っていたわけではなかったという。
実は彼は、ただクジラを撮りたいだけだった。8歳の頃に図鑑でクジラの存在を知って以来、クジラを撮影するという夢をずっと持ち続け、40年越しにその夢を実現するチャンスを手にしたのだ。
しかし、彼の目に映ったのはクジラではなく、プラスチックの汚染された海だった。もちろん、プラスチックはクジラにも悪影響を与える。そこで彼は、世界の海の現状を伝えるためにテーマを変えた。
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世界のプラスチックのリサイクル率はわずか7%だそうであり、世の中に生み出されたプラスチックのほとんどは埋め立てられる。しかしプラスチックは自然分解しない。つまり、我々が生み出してきたプラスチックのほぼすべてが、プラスチックのまま世界中のどこかに存在しているということだ。
さらにプラスチックごみは、毎年尋常ではない量が排出される。アメリカだけで、毎年8,000万トンのプラスチックごみが出るという。東京スカイツリーの重さが3.6トンらしいので、東京スカイツリー2,222個分の重さである。想像もつかない。また北米の海には、推定で3,440万トンのマイクロプラスチックが漂っていると考えられている。
海というのは、プラスチックごみだらけの場所なのだ。
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生物の体内に入り込むマイクロプラスチック
海にプラスチックが流れ着くことによって引き起こされる動物への影響は、とてもイメージしやすいだろう。
監督が大好きなクジラは、何万トンもの水を飲み込んでプランクトンなどを食べている。プランクトンとプラスチックの区別はなかなかつかず、なんと大量のプラスチックを飲み込んだことで死亡するクジラもいるという。海鳥でも驚かされたが、あれだけ大きなクジラを死なせてしまうのもまた衝撃だ。
ポリ袋は、カメにとって大敵だ。カメの目にはクラゲに見えてしまい、そのまま食べてしまうのである。そして、体内にプラスチックが入り込んだカメは泳ぎ方がおかしくなってしまう。体内でガスが発生し、そのガスによって身体が浮いてしまうからだ。そういうカメを見つけては、治療して海に返す団体も紹介されていた。
このような問題は、イメージしやすいだろう。しかし、気づきにくいが我々にも関係があるこんな問題もある。それが、先程名前だけ出した「マイクロプラスチック」だ。
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マイクロプラスチックというのは、プラスチックごみが砕けたり割れたりすることによって小さな破片となったものだ。大きな動物は大きなままのプラスチックごみを食べてしまうが、魚などの小さな動物は、このマイクロプラスチックを摂取してしまう。
映画の中では、驚くべき調査が行われていた。インドネシアとカリフォルニアで、スーパーに並ぶような魚を調べたところ、全体のおよそ25%からプラスチックや紡績繊維などが発見されたという。魚が体内に摂り込んだプラスチックは、我々が好んで食べる部位に蓄積されていることが多いという。
つまり、我々人間も間違いなくマイクロプラスチックを食べているということである。
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問題は、「マイクロプラスチックを体内に摂り込んでいる」という点だけに留まらない。
マイクロプラスチックは、大きなプラスチックが分割される過程で表面に凹凸ができる。そしてその凹凸に海中の化学物質が付着することで、マイクロプラスチックは「海を漂う毒物」のような存在になっていると指摘されていた。つまり、マイクロプラスチックを摂取するというのは、化学物質などの毒も一緒に体内に摂り込んでいることになるのだ。
「自分に被害がないから別に気にしない」などというスタンスでは、SDGsの時代を生きていくことは難しいだろうが、やはり直接的な害がある方が動きやすいことも確かだろう。プラスチックごみは確実に、我々の健康を蝕んでいるのである。
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世界ではどんな対策が行われているのか?
プラスチックごみが他にどんな影響を与えるかについては、実際に映画で確かめてほしい。我々の「便利な生活」が、いかに海を汚しているかが理解できるだろう。
この映画ではさらに、プラスチックごみに対して世界がどんな対策を行っているのかにも触れられていく。
ドイツは世界で初めて「容器包装廃棄物法」を成立させた。法律の具体的な内容については以下の記事を読んでほしいが、「リサイクルをさらに推し進める政策」のようだ。
ドイツにはプラスチック回収のための機械がスーパーマーケットなどあちこちに設置されており、人々はプラスチックごみを持ち込むことでお金が得られる。きちんとお金を循環させながら、リサイクルの義務をさらに強く課すことで、廃棄されるプラスチックごみを減らそうという狙いだ。
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またルワンダは、ポリ袋の使用を禁止した世界でも数少ない国だそうだ。元々工業が盛んではない国だからこそ可能な方針だとはいえ、なかなか思い切った決断をしたものだと感じた。
この映画ではまた、「ソーシャルプラスチック」という仕組みを広めようとする環境団体も取り上げられている。これは、プラスチックのリサイクルによって生まれるミクロな経済圏を、特に発展途上国で広めていこうという動きだ。
基本的な流れは、プラスチックをリサイクルした「ソーシャルプラスチック」を作り、それをこの動きに賛同する企業に使ってもらうことでお金を循環させる。そして発展途上国の人は、リサイクル用のプラスチックごみを集めて提供することで、より多くの所得を得られるようになるというわけだ。
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この取り組みはまだ一部の地域でしか行われていないようだが、可能性を感じさせる活動だと思う。「エコ」や「SDGs」という言葉は美しく響くが、なかなかそれだけで行動に移すことは難しい。「プラスチックごみを回収すること」が、経済的な動機に裏付けられている点が、仕組みとしてとても上手く回りそうだと感じられた。
このように様々な国や団体が「プラスチックごみ」と向き合っている。日本では「ポリ袋の有料化」が進められたが、正直これがどの程度プラスチックごみの量に影響するのかは分からない。やはりもっと根本的な対策を取らなければならないだろう。
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最後に
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プラスチックごみに対処するためには、「我々は一定の便利さを手放さなければならない」と認識しなければならないことが重要だ。今の便利さを手放さずに、プラスチックごみを減らすことはほぼ不可能だろう。私たちは、「便利さを一部手放す」という苦痛を伴ってまでこの問題に直面できるか、と問われているのである。
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「便利さ」や「安さ」は、人間を動かす動機としてとても強く、営利企業はどうしてもそこに向かいがちだ。その場合やはり、「プラスチック」というのは非常に魅力的な選択肢となる。一方で、「環境に優しくない企業は消費者から選ばれない」という認識が徐々に浸透し始めているのも確かだ。
大企業が変われば社会が変わるが、大企業が変わるためには我々が「不便さ」を許容しなければならない。現実を知ることで、そう考える人が一人でも増えればいい、と感じた。
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