Kindle本出版しました!『天才・アインシュタインの生涯・功績をベースに、簡単過ぎない面白科学雑学を分かりやすく書いた本: 相対性理論も宇宙論も量子論も』(犀川後藤)

Kindleで本を出版しました。タイトルは、『天才・アインシュタインの生涯・功績をベースに、簡単過ぎない面白科学雑学を分かりやすく書いた本:相対性理論も宇宙論も量子論も』です。科学や科学者に関する、文系の人でも読んでもらえる作品に仕上げました。そんな自著について紹介をしています。
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Kindle本を出版しました

Kindleで本を出版してみました。タイトルは、『天才・アインシュタインの生涯・功績をベースに、簡単過ぎない面白科学雑学を分かりやすく書いた本:相対性理論も宇宙論も量子論も』です。

以下のリンクから、冒頭の一部をお読みいただけます。

ざっくりしたテーマ毎に12巻に分けました順番通りに読んでいただく必要はないので、気になる巻だけ読んでみて下さい。また、すべてを一気読みできる「完全版」も用意しました。全部読みたいという方は「完全版」を選択して下さい。本記事の最後に、それぞれの巻の内容紹介を書いておきます。

本書のざっくりした内容は、タイトルの通りです。「アインシュタイン」という、恐らく世界一有名だろう科学者を中心に、現代科学に関わる様々なエピソードをまとめました。相対性理論・宇宙論・量子論などの科学そのものの話については、科学に詳しくない人にも理解してもらえるように分かりやすく書いたつもりです。そしてさらに、科学の話に限らず、科学・科学者に関する様々な面白いエピソードにも触れました。本書を読めば、過去100年ぐらいの面白科学雑学はかなり網羅出来るのではないかと思います

このブログ「ルシルナ」を読んでくれている方はご存知だと思いますが、私は「科学本」を読むのが好きです。ただ、一般的に「科学本」というのは、「専門的過ぎる」「簡単な雑学過ぎる」「テーマが限定的」であることが多いと言えます。私は、「もっと広範な話題を扱い、文系の人でも読め、かといって簡単すぎもせず、読了後に様々な科学の話題に関心が持てるような本」があればいいのにと思っていました。というわけで、そういう本を自分で書いてみようと考えたのです。

本書は、今まで私が読んできた様々な「科学本」の記述を総ざらいし、アインシュタインを軸にしてそれらをまとめました。「難しすぎる話」は避け、「一般的な入門書には間違いなく書かれているだろう内容」は適宜省略しています。また、「完全版」を読んでいただけると分かるかと思いますが、本書では、最初から最後まですべての要素をひと繋がりになるように構成しました。その辺りの構成の妙も楽しんでいただけたら嬉しいです。

アインシュタインを軸にしたのには理由があります。アインシュタインは、過去100年ぐらいに起こった、科学における重大な事柄のほとんどに関わっていると言っていいからです。アインシュタイン自身の功績から「ブラックホール」「ビッグバン理論」が生まれているし、アインシュタインが死ぬまで反対し続けたことで「量子論」が発展しました。そして、アインシュタインの功績として有名だろう「相対性理論」は、世界の捉え方を一変させたと言っていい程の衝撃をもたらしたのです。

また、アインシュタインが生み出した方程式から原爆が生み出されたり、ユダヤ人という出自からナチスドイツと関わらざるを得なかったりと、科学以外の領域でも様々なエピソードがあります。科学者としてではない人間的エピソードも様々に知られており、アインシュタインを中心に据えることで、数多くの話題を取り上げることが出来るというわけです。私としては、とても良い構成の本になったと考えています。

Kindle Unlimitedに登録している方は無料でお読みいただけます。また、各巻250円完全版は750円で販売中です。是非読んでみて下さい。

各巻の内容紹介

天才が人間でノーベル賞 編

本書では、「科学者アインシュタインの凄さ」を様々なエピソードを踏まえながら語りました。科学者としてどのような評価を得ているのか、ユダヤ人であったことでどのような苦労をしてきたのか、日本に旅行で訪れた際に何があったのかなどに加え、アインシュタインの「ノーベル賞受賞」に関する話にも触れています。

科学にあまり詳しくない方の中には勘違いしている方もいるだろうと思いますが、アインシュタインは「相対性理論」でノーベル賞を受賞したのではありません。あまり聞き馴染みはないかと思いますが、「光電効果」と呼ばれる現象に関する研究でノーベル賞を獲っているのです。もちろん、ノーベル賞受賞時点で「相対性理論」は発表済みでした。では何故、最も有名な業績ではなく、「光電効果」などというあまり知られていない研究でノーベル賞を受賞することになったのでしょうか。そこには実に様々な要因が関係していたのです。

2つの相対性理論、解説するよ 編

本書では、恐らく誰もが名前ぐらいは耳にしたことがあるだろう「相対性理論」について、私なりの説明を試みました。「相対性理論」には「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」の2種類があり、それぞれまったく異なるものです。非常に奇妙な主張をする、なかなかするっとは理解できない理論なのですが、「相対性理論が存在しなかったらグーグルマップは使い物にならない」など、私たちの身近な生活に直結する理論でもあります。

アインシュタインが生み出した「相対性理論」は、それまで300年間も信じられてきた「ニュートン的な世界の捉え方」をぶっ壊すものであり、そういう意味で驚きをもって迎えられた理論です。またアインシュタインは、そんなとんでもない理論(特殊相対性理論)を、なんと「特許局の役人」として働いている時に生み出しました。科学の世界でまったく無名だった人物が、科学の捉え方を根底からひっくり返すような超絶ぶっ飛んだ理論を発表したのですから、科学者たちは仰天してしまったのです。

そんな、科学の世界を一変させた理論の大雑把な概略を、本書を読んで理解してもらえればと思います。

ぶっ飛び天才揃い踏み 編

本書では2つの相対性理論を取り巻く様々なエピソードに触れていきたいと思います。「特許局の役人」という、科学の世界とはまったく縁遠い場所にいたアインシュタイン。そんな人物が発表した、それまでの科学の常識を一変させるような革新的な論文は、どのようにして科学の世界に受け入れられていったのか。その背景の1つとして、量子論で有名なプランクという科学者の支持がありました。

また一般相対性理論においては、アインシュタインは何故か、ヒルベルトという数学者に成果を横取りされそうになってしまいます。数学者としてもの凄く有名なヒルベルトと、どんなデッドヒートを繰り広げたのでしょうか。

また、特殊相対性理論を生み出すためにアインシュタインは「相対性原理」と呼ばれる考え方をベースにしたのですが、それを生み出したのが天才・ガリレオでした。そんなガリレオの話から、ニュートンホーキングと、有名な科学者へと話題を広げています。

世界の捉え方を一変させたと言っていい「相対性理論」にまつわる興味深い話と、時代を彩った様々な天才科学者のエピソードを是非読んでみてください。

一夜の大バズリと激アツ復活劇 編

本書は、全12巻の中でも1、2を争うほど、「アインシュタインの生涯におけるドラマティックなエピソード」が詰め込まれていると言っていいかもしれません。というのも、「アインシュタインが世界的有名人になったきっかけ」と「『人生最大の失敗』として有名なエピソード」について触れているからです。しかしホント、アインシュタインほど面白いエピソード満載の科学者はいないと改めて感じます。

「アインシュタインが世界的有名人になったきっかけ」は、一般相対性理論の正しさを証明した「日食観測」です。これをきっかけに、科学の世界ではかなり知られていたアインシュタインは、一夜にして世界的有名人になりました。そのバズりっぷりは、近現代では比較するものを見つけられないレベルだと思います。なにせ、「ノーベル賞を受賞する前の一介の科学者が、たった1日で世界中の人にその存在を知られるようになった」という話だからです。そんなきっかけを作った「日食観測」にまつわる興味深いエピソードと、いち科学者が世界的有名人になった背景について書いています。

また、有名なエピソードが山ほどあるアインシュタインの生涯においても、かなりよく知られているエピソードについても紹介しました。ある事柄について「我が人生最大の失敗」と語ったという話です。本書で詳しく触れていますが、恐らくそのエピソード自体は嘘だろうと考えられています。ただ、この「人生最大の失敗」の話は、ミステリ小説もビックリの二転三転を繰り返す、科学史上における「華麗なる復活劇」として非常に面白いエピソードです。「宇宙定数」という、なかなか聞き馴染みがないだろうテーマに関する話なのですが、できる限り分かりやすく書いていますので、是非読んでみてください。

クソ夫ゲロヤバ伝説と奇跡の年と原爆と 編

本書は、全12巻の中で最もアインシュタインを「悪く」書いていると言えるでしょう。本書の副題にもある通り、まさに「クソ夫」なのです。

アインシュタインは2度結婚しているのですが、最初の妻であるミレヴァに対しては相当に酷い扱いをしています。後に結婚するエルザに対して、「ミレヴァを『解雇できない雇い人』のように扱っている」と言っているほどです。「結婚とは、たまたま起きてしまったことを長続きさせようという、むなしい試みである」と手紙に書いたことさえあります。昔の著名人にはありがちな話かもしれませんが、とにかく「夫」としてはサイテーだったと言っていいでしょう。

しかしサイテーだったのは「夫」としてだけではありません。人間としてもなかなかサイテーでした。というのもアインシュタインは「優生学」的な考え方を持っていたからです。先天性の股関節脱臼を患うミレヴァを「肉体面でも道徳面でも劣っている人間」と評したり、ダウン症の息子を育てる友人に対して、「値打ちのある人間はそんなことのために時間を費やすべきではない」みたいに言ったりしていました。「優生学」的な考え方は、アインシュタインが生きていた当時は割と信じられていたものであり、決してアインシュタインが特別酷かったわけではないでしょう。ただ、「優生学」的な考え方は、「ユダヤ人を根絶やしにする」と意気込むナチスドイツの根幹を成す動機でもあったわけで、自身もユダヤ人として絶えず苦労を強いられてきたアインシュタインがそのような考え方を支持していたことは意外にも感じられます

また、アインシュタインと「原爆」とは切っても切り離せません。アインシュタインは直接的に原爆開発には関わりませんでしたが、より深いレベルで原爆と関係があるのです。時代背景や不十分な情報が招いた不幸だったとは言え、日本人としてはなかなか複雑なものがあります。

そんなわけで、アインシュタインの負の側面を多く扱う巻ではありますが、本書ではアインシュタインの輝かしい「奇跡の年」についても触れました特許局の役人だった1905年に、世界を一変させる5つの論文を発表したことから「奇跡の年」と呼ばれているのです。そんな「奇跡の年」に発表した「ブラウン運動」に関する論文について主に書きました。1905年には他に、「特殊相対性理論」「光電効果」についても論文を発表しています。

天才の超絶ダメダメ期 編

本書では、特許局時代や学生時代など、アインシュタインが世に出る以前の話について触れています。また、学生時代に関わりがあった数学者ミンコフスキーとのエピソードや、最晩年の興味深い逸話についても書きました。

アインシュタインは、後に世界的な科学者になるとは思えないような学生時代を過ごしています。結構な落ちこぼれだったのです。数学は抜群に出来ましたが、それ以外がまったくダメで、学校教育の中ではなかなか評価されませんでした。そんなわけで就職活動も上手く行かず、大学の助手になりたいという希望は叶いません。結局、友人の父親に仕事を紹介してもらったのですが、それが特許局だったというわけです。

アインシュタインにとって特許局はとても素晴らしい職場でした。大学に勤めれば研究以外の些事に忙殺されてしまうのは今も昔も変わらないようで、アインシュタインはそんな煩わしいことに悩まされることなく研究に没頭できたのです。と書くとサボりまくっていたように思われるかもしれませんが、アインシュタインは特許局の職員として有能だったようで出世もしています。また、「物事の本質を見抜く」という意味で、特許局の業務はうってつけだったそうです。結果として、助手として採用されなかったことが、後の成功を生んだと言っていいのかもしれません

また、アインシュタインは学生時代、ミンコフスキーという著名な数学者の講義に出席していたのですが、ミンコフスキーに「怠け犬」と呼ばれるほど、アインシュタインはまったくやる気を見せなかったそうです。しかしそんなミンコフスキーが、アインシュタインの特殊相対性理論に対して大きな貢献を果たすのですから、人生のめぐり合わせというのは面白いものだと思います。

天才が天才として頭角を現す以前の様々なエピソードを読んでみてください。

ヤバ量子論で天才2人がイカれ神バトル 編

アインシュタインの生涯には、「失敗だと思っていたものが復活した」とか「革命的すぎて最初は批判されまくった」など魅力的なエピソードが様々にあるのですが、本書で触れる「量子論」もそんな面白い話の1つと言えます。というのも、「量子論のことが嫌いすぎて、死ぬまで徹底的に反対し続けた」からです。

科学やアインシュタインについて詳しくない方でも、「神はサイコロを振らない」という言葉を耳にしたことはあるでしょう。また、「月は、きみが見上げたときにだけ存在するとでも言うのかね?」という発言も有名ではないかと思います。実はこれらはすべて、「量子論なんていうイカれた理論に俺は反対だ!」という意思表明なのです。アインシュタインは様々な場面で「名コピーライター」っぷりを発揮していますが、量子論への反対において特にそれが強く表れていると感じます。

さて、結果としてアインシュタインは「負け」てしまいました。つまり、「反対し続けていたアインシュタインの方が間違いだった」ということが、アインシュタインの死後証明されてしまったのです。しかし話はそれで終わりません。非常に面白いことに、「アインシュタインが徹底的に反対し続けたこと」が、回り回って「量子コンピュータ」を生み出すきっかけになっているのです。アインシュタインは様々な功績を残しましたが、結果として「量子論に反対し続けたこと」こそが最大の功績と言えるのかもしれません。なにせアインシュタインは、「一般相対性理論についてより100倍も量子論について考えた」のですから。

本書では、そんなアインシュタインが毛嫌いし続けた「量子論」について、可能な限り分かりやすく説明しています。多くの天才科学者たちが「訳わからん」と嘆き続けてきた理論なので、完全に理解するのは難しいでしょう(私もちゃんとは分かっていません)。本書では概略だけを理解して、興味を持っていただけたら、是非別の本を読んでみて下さい。

ちなみに、「アインシュタインの負けが確定した」という話は<負け天才と哀れ猫、SF的多世界 編>の方で詳しく書きました。本書で「量子論」に興味を持っていただけたら、<負け天才と哀れ猫、SF的多世界 編>も読んでみて下さい。<負け天才と哀れ猫、SF的多世界 編>では本書で触れた知識を踏まえた説明をしている部分があるので、まず本書を読んでいただくのがいいかと思います。

負け天才と哀れ猫、SF的多世界 編

全体的に、どの巻から読んでも大丈夫なように構成していますが、本書だけは、<ヤバ量子論で天才2人がイカれ神バトル 編>を先に読んでいただく方がいいかもしれません。<ヤバ量子論で天才2人がイカれ神バトル 編>での説明を<負け天才と哀れ猫、SF的多世界 編>でも用いているからです。<負け天才と哀れ猫、SF的多世界 編>でも<ヤバ量子論で天才2人がイカれ神バトル 編>と同様、「摩訶不思議」としか言いようがない「量子論」について出来るだけ分かりやすく書いています

<ヤバ量子論で天才2人がイカれ神バトル 編>では「アインシュタインは一体、『量子論』の何が気に食わなくて反対したのか」に重点を置きました。死ぬまで「量子論」を批判し続けたアインシュタインが「許せなかったポイント」について詳しく説明したというわけです。そして<負け天才と哀れ猫、SF的多世界 編>では、アインシュタインの死後の話がメインとなります。アインシュタインは、ボーアという有名科学者とバトルを繰り広げたのですが、その闘いは彼らの死後も続いていたのです。そして、理論家ベルの革命的な論文と、実験家アスペによる精密な測定によって、ついに世紀の論争に決着がつくことになります。

その結末は、「アインシュタインの敗北」という結果に終わりました。<ヤバ量子論で天才2人がイカれ神バトル 編>で「コペンハーゲン解釈」について理解した方には驚きの結果と言えるでしょう。世界は、「私たちの常識が通用しない奇妙奇天烈な理屈」によって動いていることが証明されてしまったのですから。

しかし、「アインシュタインの敗北」は決して無意味なものではありませんでした。というのも、「アインシュタインによる反対」は結果として、「問題をくっきりさせること」に繋がったからです。そして最終的に、「量子コンピュータ」というアイデアが生まれることになったのでした。<一夜の大バズリと激アツ復活劇 編>で触れている「人生最大の失敗」(宇宙定数)の話もドラマティックですが、「量子論」に反対し続けたアインシュタインの奮闘もまた、華麗すぎる復活と言っていいでしょう。さらに本書では、「シュレディンガーの猫」や「多世界解釈」など、「本当に科学の話ですか?」と感じられてしまう面白い話にも触れています。

そんな、小説でも読んでいるみたいな凄まじいバトルの顛末を是非読んでみて下さい。

ブラックホールってマジなんなん? 編

アインシュタインはその生涯において様々な形で「反対」の意思を示しましたが、本書で取り上げる「ブラックホール」のことも受け入れなかったことで知られています。とはいえ「ブラックホール」に関しては、2019年に世界で初めて直接観測されるまで、「本当に存在するか分からない」という立場を取る科学者がいたそうなので、アインシュタインがその存在を信じなかったのも無理はないと言えるかもしれません。

「ブラックホール」は最初、アインシュタインが発表した「一般相対性理論」をある特殊な条件で解いた場合に現れる解としてその存在が知られました。つまり、「アインシュタインの研究による副産物」なのです。それなのに、その存在を断固として受け入れなかったのだから、いかに「ブラックホール」が常識外れの存在だったのかが想像できるでしょう。また、「一般相対性理論から導き出された『ブラックホール』においては、一般相対性理論は成り立たない」という非常に奇妙な状況も判明します。これはつまり、「一般相対性理論も、世界を記述するのに不十分だ」ということを意味しているのです。理論自身から生み出された存在が、理論自身の破綻を約束するような理論は、一般相対性理論をおいて他にありません。そういう意味でも「ブラックホール」は特異な存在なのです。

本書では、「一般相対性理論からブラックホールが生み出された経緯」や、「天体に関する研究からブラックホールが理論的に裏付けられていく過程」などを軸に、「暗黒物質」「重力波」などについても触れています。「観測される以前に、理論的な裏付けが整えられた」という、あまりに奇妙すぎる天体についての面白いエピソードを読んでみてください。

嫌われビッグバンとヤバすぎ人間原理 編

「宇宙がビッグバンから始まった」と考えるのは、現代では「常識」だと思いますが、「ビッグバン理論」が生み出された当初は批判の連続でしたアインシュタインも、「宇宙が膨張する」という発想に拒絶反応を抱いた1人です。アインシュタインを含めた当時の科学者は、「宇宙は大昔からずっと変わらない」(静的宇宙)と考えていました。そんな時代に、「メチャクチャ小さなものが爆発的に大きくなって宇宙が出来た」と主張するのは、かなり異端的だったのです。

さらに厄介だったのが、その主張を推し進めたルメートルという人物がカトリックの司祭だったことでしょう。科学者でもあり司祭でもあったルメートルが「宇宙はビッグバンから始まった」と主張することは、当然「創世記」や「神」の存在を想起させます。それまで科学は、カトリックから散々な扱いを受けてきたこともあって、余計に「ビッグバン理論」は嫌われることになったのでした。

本書では、アインシュタインも反対を表明した「ビッグバン理論」がハッブルという天文学者の発見によって息を吹き返した経緯や、ガモフという異端的な科学者が「ビッグバン」を理論的に説明した「αβγ論文」のメチャクチャ面白い話に触れていきます。また「ビッグバン」は、「元素合成」(水素や炭素などの元素がどのように生み出されたのか)を説明する上でも重要なのですが、その過程で、科学において過去イチと言っていいほど「ヤバい主張」である「人間原理」が生み出されました。「『世界のあり方』を理解する」ために、「『我々人間の存在』を加味する」というイカれた考え方がどのように生み出されたのか、その興味深いエピソードを紹介しています。「ビッグバン理論」の話は、<ビッグバン物語、もはや映画やん 編>にも続くので、併せて読んでいただけると嬉しいです。

本書は、<一夜の大バズリと激アツ復活劇 編>の「宇宙定数」の話とセットで読むとより理解が深まるかと思います。是非併せて読んでみて下さい。

ビッグバン物語、もはや映画やん 編

<嫌われビッグバンとヤバすぎ人間原理 編>では、「ビッグバン理論」と「人間原理」について、歴史的背景を踏まえながら、どのような主張なのかについて触れました。<ビッグバン物語、もはや映画やん 編>では、「人間原理」が最後に重要な役割を果たした「元素合成プロセス」に関するとんでもないエピソードと、「ビッグバン理論」がいかに科学の世界で受け入れられたのかについて書いていきます。

まずは、「『人間原理』的アプローチによって具体的な予測をし、それが正しいと証明された唯一の事例」であるホイルのぶっ飛んだエピソードから始めましょう。「元素合成」における最大の功労者であるホイルがノーベル賞を受賞できず、ホイルのお陰で大発見を成し遂げた科学者が漁夫の利を得るという結末を含め、「ホントにこんなことが実際に起こったのだろうか」と感じてしまうムチャクチャな話です。

さらにその後で、「『ビッグバン理論』の正しさが認められた過程」について触れていきます。「ビッグバン理論」には当時、「定常宇宙論」という手強いライバルがいました。「宇宙は大昔から変化していない」という、当時の科学者に受け入れられていた「静的宇宙」の考え方をベースにしたアイデアです。そしてどちらかと言えば、「定常宇宙論」の方が支持されていたと言っていい状況にありました。

そんな劣勢状態から、「ビッグバン理論」はいかにして勝利を果たしたのでしょうか。そこには、本当に「映画に出来るんじゃないか」と思わせるような数々の人間ドラマがたくさんあります。「最終的に『ビッグバン理論』の正しさを証明した2人が、『自分たちが何を成し遂げたのか』を新聞で初めて知った」という、恐らく何を言っているのか理解できないだろうラストの展開も含め、もの凄くドラマティックなのです。

また、<嫌われビッグバンとヤバすぎ人間原理 編>でも取り上げているガモフが再び登場しますが、そんなガモフに振り回され続けたアルファーという科学者の顛末にも触れています。人間味溢れる科学者たちの物語を読んでみてください。

全部ボロカスに批判されるやん 編

本書ではまず、「アインシュタインの『量子論』に対する反対」が実際に行われた場であるソルヴェイ会議や、アインシュタインを取り上げる際に必ず出てくる「バラ」のエピソードなどに触れました。そしてその後、「バラ」に絡む2人の著名な科学者が、アインシュタインが主張する「光量子」をまったく受け入れる気がなかったという話について書いています。この「光量子」こそが「光電効果」と関係するものであり、「波なのか粒子なのか問題」にも大きく関わってくるというわけです。

その後で、「波なのか粒子なのか問題」の歴史について概略し、アインシュタインの発想がどれだけ斬新だったのか、そして斬新だったが故にどれほど批判されまくったのかに触れていきます。

また本書では、アインシュタインが最晩年に取り組んでいた「力の統一」についても書きました。今でこそ、この「力の統一」という発想は、科学の世界では当然のものとして受け入れられており、むしろ「科学における”聖杯”」のような扱いになっています。しかしアインシュタインがその道に足を踏み出した当時は、「アインシュタインは訳の分からんことをしている」と批判されていました。既に高齢だったため、「やっぱりアインシュタインほどの人物も、歳を取るとダメだね」みたいな扱いをされていたのです。そんなアイデアが、今では「科学者全員が目指すべき究極の理論」と認められているのですから、やはりアインシュタインの先見性は見事だったと言えるでしょう。

最後に、アインシュタインの死に際と、死後発覚したあるトラブルにも触れています。

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