目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
久保史緒里・平祐奈が演じる大学生2人のダルダルな会話・日常が素敵すぎた!
こういう「中身のない会話」も、「そんな会話が出来る関係性」も凄く好きなんだよなぁ
この記事の3つの要点
- 久保史緒里演じる入巣柚実が「絶妙な変人」であることで物語が楽しく展開されていく
- SNSを通じて「自分のレベル」が可視化されてしまう時代において「努力」はコスパが悪いのか?
- 「やりたいことをやる」のと「評価されるようなことをやる」のとでは、どちらをより重視すべきだろうか?
ダルっとした日常だけでも全然良かったのですが、その上で割とちゃんとしたテーマもあって、その点もまた好印象でした
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殺し屋の女の子2人の会話がとにかく最高なんだよね!
そして本作『ネムルバカ』では、最初から最後まで全編に渡ってそんな「ダルっとした会話」が続くので、私的にはメチャクチャ好きな作品でした。特に本作は、「大学生」という「何もしていなくてもギリギリ大丈夫な時期」だからこそ成立する物語だなと感じたし、それによって『ベイビーわるきゅーれ』とはまた大分違った雰囲気になっているわけで、その点も良かったなと思います。
映画『ネムルバカ』の内容紹介
大学の女子寮に暮らす入巣柚実は、「先輩」と呼んでいる鯨井ルカとルームシェアしている(というか、2人で住むのがデフォルトなのだろう)。どちらも常に金欠で、特にルカの方はバイトが全然長続きしないこともあって一層金がない。彼女たちがずっと使っていた炊飯器が少し前に壊れ、今はパックご飯を食べているのだが、ドンキで6000円の炊飯器を買うかどうか悩むくらい金欠なのだ。
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さて、柚実はこれと言って何かしているわけではないただの大学生なのだが、ルカは「PEAT MOTH(ピートモス)」というバンドでギターボーカルを務めている。熱狂的なファンこそいるものの、決して「世間に知られている」と言えるようなバンドではない。ルカも、ここから「バズる」にはとんでもなく分厚い壁を越えなければならないと分かっているのだが、しかしどうしたらいいのか答えは見えていない状態だ。
また柚実はというと、日々バイト先のレンタルビデオ店で客に絡まれたり、同じ店の先輩にまとわりつかれたり、あるいは、ルカのバンドを観に行ったり、自分のことが好きであろう同級生男子に酒と食べ物をたかったりと、何てことのない日常を過ごしている。そしてそんな日々の中にルカも当たり前のようにいるのだ。彼女がバンドで夢を追いかけていることは確かなのだが、しかしそれはそれとして、柚実と過ごす「ダルっとした日常」もまた、彼女にとってはかけがえのないものなのである。
そうやって「努力」と「グダグダ」の間を行き来していたルカに、ある日なんと、人生を大きく左右するような出来事が起こり……。
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ダルっとした会話がとにかく素敵
本作については先述した通り、まずはやはり何よりも「柚実(久保史緒里)とルカ(平祐奈)のダルっとした会話や日常」がとにかく素晴らしかったです。私は40代のおじさんですけど、ホントにこういう雰囲気がメチャクチャ好きなんだよなぁ。彼女たちのやり取りなら永遠に聴いていられるし、願わくば混ざれたらいいなとさえ思います。
彼女たちの会話は、目的も理由も何もなく、特にどこかに行き着くみたいなこともない会話なんですけど、そもそも「そういう会話を当然のように出来る関係性」がまず素敵なんですよね。そしてそうであるためには、お互いが「何を喋っても大丈夫」みたいな雰囲気を出せていないといけないし、もちろんこの2人はそういう感じで満ち溢れているわけで、そういう「安心感」みたいなものがちゃんとベースにあるってことがズバッと伝わってくるやり取りも素敵でした。
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さて、本作『ネムルバカ』においては、久保史緒里が演じた入巣柚実が割と変わったキャラクターで、「変な人」が好きな私としては、その佇まいもとても良かったなと思います。例えばですが、本作の冒頭はこんな感じです。バイトかバンドの練習かから戻ってきたルカが空腹で倒れ込んでいるところに、柚実が天丼を作って差し出します。ルカは「神!」と言って食べ始めますが、すぐに「天ぷらの中身が無いこと」に気づきました。柚実は悪びれることもなく、「天かすとてんつゆだけで作った」と「なんちゃって天丼」だと明かすのですが、問題が1つ。その天丼には「エビの尻尾」もあったのです。これがどこからやってきたのかとルカが問うと、柚実はさも当たり前のように「私がお昼に食べたエビフライのです」と答えました。そしてさらに、「三角コーナーで見つけました。あ、ちゃんと洗いましたよ」と口にするのです。ルカは当然「バカなの?」という反応を見せるのですが、柚実はルカの「不満」が理解できなかったようで、しばらく考えてから「あっ、七味?」と言って七味を持ってきていました。
どうせ見栄えのためだけの存在なわけで、だったら入れない方が正解だよなぁ
この冒頭のシーンだけで、「入巣柚実は相当変わっている人物だ」ということが伝わるでしょう。そして、冒頭でズバッとそれを示すことで、その後描かれる「彼女の変わった言動」が違和感なく物語に馴染むことにもなります。さらに本作では、そんな「柚実の変わった言動」が、何てことのない物語を良い感じに”ズレさせていく”みたいな印象もあって、物語の展開においても割と重要な存在感を放っていた感じがしました。
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「やりたいことを実現するため」に努力して生きるべきだろうか?
さてそんな柚実は、本作においては「やりたいことがない人」という記号を有する存在としても重要だったりします。
本作は全体的にはユルユルっとした日常を描くだけの物語なんですけど、観ていると次第に「全体を貫くテーマ」みたいなものが伝わってくるはずです。そしてそれは「『やりたいことを実現するため』に努力して生きるべきだろうか?」みたいな感じにまとめられるでしょう。
そういうものがなかったとしても全然好きだったと思うけど、あるから余計良いなって思った
本作では、ここまでで既に触れた通り、ルカが「夢の実現のために突っ走る存在」として描かれています。そしてそんなルカは、「厚い壁を越えなきゃいけない」という話の中で、「才能のある人はあっさりその壁を越えていくし、何なら才能のある人は最初から『あっち側』に生まれるのかもしれない」みたいなことを言っていました。ルカは夢の実現のために努力を惜しまないつもりなのですが、ただ、「頑張ったところで『壁の向こう側』に行けるかは分からないし、努力で『壁の向こう側』に行けるのだとしても、今自分がしていることがその助けになっているのかも分からない」みたいな感じで揺れているのでしょう。つまり、真剣にそんな悩みを抱いてしまうほどに、「夢の実現」と「そのための努力」は彼女にとって重要だというわけです。
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さて一方で、本作では柚実だけではなく、さらに2人の人物が「やりたいことも打ち込みたいことも持たない存在」として登場します。そしてその内の1人がこんなことを言っていました。
スマホを見ていれば、才能のある奴らがゴロゴロいて、だから、早い段階で「自分がどの程度のレベルの人間か」が可視化されちゃう。つまり、「努力したって、そこそこのところまでしか行けないよなぁ」みたいなものがはっきり分かっちゃうってこと。そんな状態で努力するのなんか、コスパ悪いですよねぇ。
SNSは可能性を広げもするけど、始まる前に終わらせる力も強いってことだよなぁ
正直なところ、このような類の主張は本作を観る以前から色んな場面で見聞きしてきたものだし、別に目新しいわけではありません。ただ、特に今の若い世代にはメチャクチャしっくり来る感覚なんだろうし、「うわ、メッチャ分かる!」って感じる人も多いんじゃないかと思っています。
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また、先の発言をした人物は、さらにこんなことも言っていました。
ルカは「やりたいことがある人」と「無い人」の2種類しかいないと思っている。でも実はその間に「何かしたいけど何をしたらいいか分からない人」って層があって、それが全体の8割ぐらいなんじゃないか。
そしてその代表格が入巣柚実というわけです。
「何かしなきゃ!」みたいなのはあるけど、結局具体的な行動には繋がらないんだよね
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柚実は、努力したりその努力が着実に成果になっていたりするルカを見て素直に称賛します。しかし同時に、「自分には才能なんか無い」「底辺の人間だってことぐらい分かってる」みたいなことも口にするのです。確かにルカのような人間が近くにいたら、「自分なんて……」みたいな発想になってしまうのも当然かもしれませんが、それはそれとして、彼女のこの発言からは、「『何かしたい』って気持ちはあるんだけどなぁ」みたいな気分が感じられるんじゃないかとも思います。
ただ同時に、ルカの努力を見ているからこそ「自分にはあそこまでは出来ない」みたいに考えたりもするだろうし、「だったら、何もしなくてもいいか」みたいにも感じてしまうのかもしれません。この辺り、SNS時代だからこそ余計に難しさが増している気がするし、特に若い世代にとっては結構大きな問題なんじゃないかと思います。
「駄サイクル」に対する嫌悪感
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さて、ここまで書いてきたような理由で柚実は「夢を持つこと」や「努力」に躊躇しているのだと思いますが、さらにもう1つ、彼女にとってブレーキになるような要素が描かれていました。それは、本作で「駄サイクル」というインパクトのある言葉で表現されていた状況で、「あんな人たちのようにはなりたくないよねぇ」という気持ちが柚実を押し留めているみたいな部分もあるように思います。
全然関係ないけど、西尾維新の『クビキリサイクル』って小説を思い出したわ
本作でその「駄サイクル」が描かれるのは、柚実がバイト先の先輩から食事に誘われた場面です。彼女はこれまでずっとその先輩からの誘いを断っていたのですが、彼がバイトを辞めるというタイミングで「1回ぐらい奢らせてもいいか」と考え誘いに乗ってみることにしました。
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彼が連れて行ったのは、「表現者・アーティストが集まれる場を作りたい」というオーナーの希望が詰まったお店です。先輩も「これから自分はこんなことをするつもりだ」と宣言するし、他のお客さんもそんな話をしている感じがします。さらに、先輩の知り合いだというオーナーがテーブルにやってきて、自作のラップを突然始めるのです。そしてそのラップを先輩が絶賛する、みたいなシーンでした。
このバイト先の先輩を演じてるのが、ロングコートダディの兎なんだよね
「うわぁ、こういう人いそう」っていう絶妙なラインを衝いてくるんだよなぁ
さて、柚実は帰ってからその話をルカにするのですが、その際にルカが「駄サイクル」という言葉で彼らを斬り捨てます。これは当然「ダサい」と「サイクル」を掛け合わせた言葉で、ルカは「お互いがお互いを褒め合って、そこから外へは出ていこうとしない集団」みたいな意味で使っていました。その物言いはかなり辛辣で、例えば、「あいつらは、自分が好きなように出来る個展は開きたがるけど、客観的に評価されるコンテストには絶対に出さない」といった具合です。まあその通りでしょうけどね。
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当然柚実も、そういう雰囲気に対して心底嫌悪感を抱いていることが分かるような反応をしていました。そしてそれ故に、「自分はそうはなりたくない」みたいな感覚が強いんじゃないかと思います。つまり、「何かを始めてみることは全然アリだけど、でもいつの間にか『駄サイクル』みたいな状態になってたりしないだろうか?」みたいな怖さを抱いているんじゃないかというわけです。「そんな風に考えてしまって、一歩を踏み出せずにいる」みたいなこともあるかもしれません。
そして、「駄サイクル」とはまた全然違う話ですが、本作のラストの展開もまた、「やりたいこと」「評価されること」などへの辛辣な「皮肉」が詰め込まれている感じがあって、そういう部分も凄く良かったなと思います。
特にラストの展開は、「なるほど、そう来るか!」って感じだったもんね
でも、「いやそうだよね、そりゃそうだよ」ってなっちゃったよなぁ
「やりたいことがやれること」と「やっていることが評価されること」のバランスをどう取るべきか?
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さて、ラストの展開については具体的に触れるつもりはないので何を言っているのかよく分からないと思いますが、しかし本作『ネムルバカ』を観て私は、「どうなるのが正解なんだろう?」と感じました。いや、もちろん当たり前の話ですが、「自分のやりたいことがやれていて、他者から評価もされる」という状態が最善に決まっているでしょう。しかし、すべての人がそんな場所に辿り着けるわけではありません。というか、ほぼすべての人にとってそんなこと不可能だろうとさえ思っています。
となれば、次に目指すべき地点は、「やりたいことはやれているが評価はされない」か「やりたくないことをしているが評価はされている」のどちらかになるでしょう。前述した「最善」には辿り着けないと悟った場合、2つの選択肢のどちらを取るのか(あるいはどちらも取らないのか)。本作で描かれているのはまさにそのような状況なのです。ダルっとした日常の随所にこの点に関わる要素を絶妙に散りばめつつ、最後の展開で観客に一気にドカンと問いをぶつけて来る感じの作品で、なかなかのインパクトだったなと思います。
私は圧倒的に、前者の「やりたいことはやれているが評価はされない」の方が良いって思うかな
「やりたくないことはやりたくない」ってずっと言ってるしね
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さてこのラストの展開において、ある意味で「絶望」を突きつけられたと言っていいだろう柚実が、「こんなことがしたかったのかよ」と口にする場面がありました。このセリフはまさに、多くの人にグサグサ突き刺さるんじゃないかと思います。
もちろん、柚実が言及している「こんなこと」が「幸せ」に感じられるのであれば、別に他人がとやかく言うようなことではありません。本人がそれで良いと感じているなら何の問題もないでしょう。でも、そうではないとしたら? 本人がそれに「幸せ」を感じられていないとしたら? そういう時、柚実みたいに「こんなことがしたかったのかよ」って言ってくれる存在は貴重なんじゃないかとも感じました。
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さて、全然関係ない話ですが、以前何かで知って「確かに!」と感じたのが、有吉弘行の「ブレイクするっていうのはバカに見つかるってこと」という言葉です。「まさにその通り」という感じではないでしょうか。そしてそういう観点から話をするなら、私は「バカには見つかりたくないな」と感じてしまうのです。だから、「評価されなくてもいいからやりたいことをやっている」ぐらいがいいんだろうなと思っています。
しかしこの言葉って、「ブレイクしていない人間」が言うとダサいから、そういう意味でも絶妙だよね
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最後に
そんなわけで色々書いてきましたが、私はやはり、本作の「ダルっとした会話・日常」がとにかく素敵だなと感じました。そしてその上で、全体を貫くテーマも実に印象的・現代的で、そういう部分も含めてとても良かったです。そこまで積極的に観ようと思っていた作品ではないのですが、観れて良かったなと思います。
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